リンク機構にできないこと
リンク機構で任意の代数曲線が描けることを確認しましたが、
代数曲線に含まれない曲線を描く方法はあるのでしょうか。
それについて考えるために、
リンク機構の挙動を代数で表します。
n 個の自由点の座標を (x1, y1), (x2, y2), ... ,(xn, yn) とし、
m 本のリンクの長さを r1, r2, ... ,rm とします。
例えば、リンク r1 が点 (x1, y1) と点 (x2, y2) をつないでいた場合、そのことを
(x1 - x2)2 + (y1 - y2)2 = r1
と書き表すことができます。
このようにして全てのリンクについて方程式を立てることで、
変数 2n 個、m 本の連立方程式となります*1。
複雑なリンケージの方程式を代数的に解けるかは明らかではありませんが、
この方程式の形式を見ると、解は r1, ... ,rm 及び媒介変数、有理数とその四則演算・冪根による式で表せる、という予想が立ちます。
それが正しければ、三角関数や指数関数などの特殊関数*2は、
リンケージでは表せないということになります。
しかし、これらの関数は、マクローリン展開等の方法によって、
代数で近似することが可能です。
2019/02/07 訂正及び追記
*1
この方程式系(連立方程式のこと)は 2n 変数かついずれの式も多項式なので、2n 次元アフィン空間上のアフィン代数多様体(あるいはその和)V を定めます。つまり、V は対象のリンク機構の配置空間(自由点の取り得る座標の組全ての集合)です。
その中で目的の点 (xn, yn) の軌跡だけを考えることは、V を変数 xn, yn に対応する2次元のアフィン空間に射影することに対応し、それは方程式系からこれら以外の変数を消去することに関係しています。
変数消去した結果もまた代数多様体であり、射影はその代数多様体に含まれることが、代数幾何学の消去理論により分かるのです。
元のリンク機構の自由度が1なら V の次元及びその射影の次元も1のはずなので、これでこのリンク機構の点 (xn, yn) の軌跡が代数曲線に含まれることが分かります。
*2
正確には、平面上の (x, cos(x)) や (x, exp(x)) などのグラフです。