反転器
反転は、高校までの数学ではあまり触れることもなく、わかりやすい特徴もあまり多くはありませんが、その分不思議で魅力的な性質を持っています。
下のポスリエの反転器の赤い点を動かして、青い点の動きを見てみましょう。
点線は反転の基準となる円で、この上で2点は重なります。
次の図は、赤い点の動きを、(原点を通る)円を描くリンク機構によって制限したものです。青い点が直線を描いていることを確かめてみましょう。
実は、反転器を作る方法は他にもいくつかあり、中にはねじれ平行四辺形を利用したものもあります。
ねじれ平行四辺形のリンク途中に点を付しただけの、ポスリエ反転器と比べてもシンプルなものです。
ポスリエの反転器と同じく、発見者の名前から、ハートの反転器と呼びます。
以下に、これが反転器となることの大まかな証明を記します。
下の図ではリンクの中点に点を置いていますが、必ずしもその必要はありません。
反転器となる条件は、3点 O, X, Y の通る直線が、直線 AC 及び BD と平行になることで、
言い換えると、
AO : OB = AX : XD = CY : YB
が成り立つことです。
(直線 AC と直線 BD が平行であることは、
三角形 ABD と三角形 CDB が合同であることから分かります。)
上の図の赤いリンクは、ポスリエの反転器と同じ構造になっています。つまり、 BEBDの値が一定であることが、ポスリエの反転器と同じようにして分かります。
①AC = BE より、ACBD も一定です。
②三角形 BOY と BAC の相似から、 OY : AC が一定であることが分かります。
よって、定数 m を用意して、OY = mAC と書けます。
③同様に、三角形 AOX と ABD の相似から、 OX : BD が一定であることが分かり、
定数 n を用意して、 OX = nBD と書けます。
①、②、③より、
OXOY = (nBD)(mAC) = nm(ACBD)
n、m、ACBD はいずれも一定と分かっているので、
OXOY も一定であることが分かりました。
さらに、これでねじれ平行四辺形の支柱がうまく働くことも示せます。
というのも、図に示した支柱もまた、ポスリエの反転器と同じ構造になっているのです。
そのため、十分な長さを取れば、
この支柱によって、リンク機構の動きが制限されることはありません。
また、点 G は「点 X, Y から等距離」かつ「点 O, F から等距離」なので、
線分 XY と線分 OF それぞれの垂直二等分線上にあることが必要となります。
平行四辺形の場合、点 X, Y 及び O, F のある辺は対辺同士となるので、
点 G が存在できる点は対角線の中点しかありません。
よって、ねじれ平行四辺形が潰れたとき、
点Gがねじれ平行四辺形の上に乗っていなければ、そこから平行四辺形に変化することはありません。
平行四辺形への変化を防ぎつつ、動きを制限することもない、ということから、
これが支柱としてうまく働くことがわかりました。