3.無理数
1.数直線と実数
このページは電子ブック「探求 数学Ⅰ」の一部です。
<実数>
数直線上の点と数が1対1に対応する。1本の数直線に対応する数を実数という。
実数は0か正か負か3つの種類に分けられる。
2つの実数a,bには、の3つの場合のどれかの大小関係が成り立つ。
互いに素な2整数を使った分数で表せる数を[有理数(比の数の意味でRational Number)]という。
有理数以外の実数を[無理数(irrational number)]という。
・有理数は見た目が分数という意味ではない。見た目ではなくて、分数で表せるもの。
それに対して、小数、分数は見た目の言葉だ。0.5は小数で、2分の1は分数。同じ有理数なのにね。
有限小数0.2=も、整数5=も有理数である。
0は通常は分数形にはかかないが0も有理数と言える。
(例)有理数,0, (√をはずせば有限小数、整数、分数)になる)
(例)無理数
<計算法則>
実数には結合、交換、分配法則が成り立つ。つまり、自由に計算ができる。
(例)
<絶対値>
数直線上で、実数xの0からの距離を絶対値という。|x|とかく。
|x|=x(のとき)、-x(のとき)
★絶対値のグラフに親しもう!
2.平方根
<平方根の大小>
正の数aの平方根は、2乗してaになる数で、正と負の2つある。
正負不明数aがあるとき、a2の正の平方根は、であり、aではない。
数直線上の2数は2乗しても同じ大小の順になる。
だから、2乗した5数が1<2<3<4<5なら、が成り立つ。
(例)面積aの正方形の1辺の長さは
<平方根の計算>
(証明)とすると、A2=a,B2=bだから、
指数法則により、ab=A2B2=(AB)2となる。
だから、となる。一方で、となるから。
(例)
<平方根の外し方>
平方根の定義からは2乗してaになる数だった。
つまり、ルートの2乗も、2乗のルートも外せるということ。
(例)
<分母の有理化>
和差積が2乗差であることを利用するなどして分母の無理数を有理数に変えられる。
(例)
・
・
=
<対称式と有理化>
xとyが共役(符号だけ一部反転)されているとき、
基本対称式xy,x+y,x+y+z,xyz,xy+yz+zx,......がカンタンな数になる。
すると、対称式は基本対称式で表現できるので、バラバラに代入するよりも計算がカンタンになる。
(例)「x=,y=のとき、x5+y5の値」は?
x+y=,xy=3-2=1。
(例)「a+b+c=1,ab+bc+ca=-2, abc=-1のとき、
a2+b2+c2、a3+b3+c3の値」は?
a2+b2+c2=(a+b+c)2-2(ab+bc+ca)=(1)2-2(-2)=1+4=5
=1・(5-(-2))=7, 3abc=-3だから、
★有理化してみよう。
★有理化ゲームをしよう。
3.平方根と応用
<整数部分と小数部分>
平方根が数直線上にならべると、2つの整数の間にある。それがわかれなければ、
2乗してみれらばよい。n,n+1の2乗の間にDがあれば、√Dはnとn+1の間とわかり、√Dの整数部分はnとなる。
(例)
「 √17の整数部分」は?
17が4×4=16と5×5=25の間だから、√17は4と5の間。√17の整数部分は4。
(例)
「x=1/(3-√5)の整数部分Nと小数部分S」は?
xを有理化すると(3+√5)/4。√5は2と3の間。xは(3+2)/4=5/4=1.25と(3+3)/4=1.5の間。
だから、N=1。S=(3+√5)/4-1=(√5-1)/4
<次元下げ>
方程式x2-2x-1=0 は、(x-1)2=+-√2から、x=1+-√2。
だから、たとえばx=1+√2のときのxの高次式の値を出したいとする。x2=2x+1を代入することで、
次元は1つ下げられる。これをくり返して1次式まで下げてからxの値を代入すればよいね。
(例)「x=√2-1のとき、D=x4+4x3+3x2+2x+1の値」は?
x+1=√2となるから、x2+2x+1=2で、x2=-2x+1
x4=(-2x+1)2=4x2-4x+1からD=4x3+(3+4)x2+(2-4)x+1+1=4x3+7x2-2x+1+1=4x3+7x2+x2+1
=4x3+8x2+1=4x2(x+2)+1=4(-2x+1)(x+2)+1=4(-2x2-3x+2)+1=4(-2(-2x+1)-3x+2)=4x+1=
<2重根号をはずす>
2重根号が2倍されていて、2重根号の中の数を積abに分解して、2重根号の外の数がa+bになれば
根号をはずすことができますね。最初に2√abという形にすることが鍵になる。
(例)の2重根号をはずすと?
6=1+5, 5=1・5から、
(例)の2重根号をはずすと?
5=1・5、3×2=6=1+5から、
4。無理数の近似値(参考)
<開平法>[square root method]
開平法は面積が指定された正方形から、
その面積を超えない1辺の長さを求める手続きです。
・手続き1で、ざっくり大きな正方形を入れる。
・手続き2で、まだスキマがある。残るL字型の誤差をそれより薄いL字型で埋めていく。
L字の面積は、幅が1から9で、長さが(2辺の和+幅)の長方形に
変形することが仕込まれているため、手順が複雑に感じる可能性があります。
この手続き1は初回だけです。手続き2はくり返すことで、精度があがっていきます。
筆算でやるには、左右のスペースを使う。左は和のスペース、積と差のスペース。
・手順1(初回のみ)
(0行目と商)まず、√Aと右スペースにかく。左スペースは空。
小数点をさかいにAを2けた区切りにしてブロックにわける。
A=b0+b1+b2+b3+......とブロックにわかれたとする。
r1=b0ーp2が最小になるpをみつける。
b0の上にp、左スペースにもpをかく。
→意味:面積b0の正方形の中に一辺がpの正方形を入れるとL字のすきまがr1ある。
(下の行)左スペースはpの下にpを、右スペースはb0の下にD=p2をかく。
(小計行)左スペースは和Bを、右スペースは差C=r1b1をかく。
→意味:面積b0b1の正方形の中に一辺10pの正方形を入れるL字の面積がCのスキマがある。
(例)√54321は、(b0,b1,b2)=(5, 43, 21)と区切る。
r1=5-2・2=1から、p=2 (D=2・2=4, B=2+2=4, C=143)
→意味:5の面積の正方形には一辺p=2の正方形を入れるとL字のスキマがr1=1ある。
→意味:543の面積の正方形には一辺10・2=20の正方形を入れるとL字のスキマがC=143ある。
・手順2 (n=1,2,3,....でループする)
(最下行と商)Bを左シフトして1の位をpとする整数Bpを考える。
rn=CーBp×pが最小になるpをみつける。D=Bp×p
bnの上の行にp,左スペースのBの右にpをつける。
→意味:スキマのL字に面積DのL字を入れるとスキマrnができる。
(下の行)左スペースはBpのpの下にpをかき、右スペースはCの下にDをかく。
(小計行)左スペースは和Bを、右スペースは差C=rnbn+1をかく。
→意味:面積b0....bn+1の正方形にL字を入れたあとも、まだL字のスキマCがある。
(例)√54321の開平の手順2は?
n=1。r1=143 - 43・3=14から、p=3 (D=43・3=129, B=43+3=46, C=14 21)
→意味:543の面積の正方形には一辺20の正方形と面積D=129のL字を入れると
一辺23の正方形を入れたことになる。L字のスキマはr1=14にへる。
→意味:54321の面積の正方形には一辺230の正方形を入れてもL字のスキマがC=1421ある。
n=2。r2=1421 - 463・3=32から、p=3 (D=463・3=1389)
→意味:54321の面積の正方形には一辺230の正方形と面積D=1389のL字を埋めると
一辺233の正方形を入れたことになる。L字のスキマがr2=32にへる。
2332=54289
(例)√2.000000....は?
・手順1 (b0,b1,b2,b3,.....)=(2, 00, 00,00,.....)と区切る。
r1=2-1・1=1から、p=1 (D=1・1=1, B=1+1=2, C=1 00)
→意味:2の面積の正方形には一辺1の正方形を入れるとL字のスキマが1ある。
→意味:200の面積の正方形には一辺10の正方形を入れるとL字のスキマが100ある。
・手順2
n=1。r1=100 - 24・4=4から、p=4(D=24・4=96, B=24+4=28, C=4 00)
→意味:200の面積の正方形には一辺14の正方形を入れるとL字のスキマが4ある。
→意味:20000の面積の正方形には一辺140の正方形を入れるとL字のスキマが400ある。
n=2。r2=400 - 281・1=119から、p=1 (D=281・1=281, B=281+1=282, C=11900)
→意味:20000の面積の正方形には一辺141の正方形を入れるとL字のスキマが119ある。
→意味:2000000の面積の正方形には一辺1410の正方形を入れるとL字のスキマが11900ある。
n=3。r3=11900 - 2824 ・4=604から、p=4 (D=2824・4=11296, B=2824+4=2828, C=60400)
n=4。r4=60400 - 28282・2=3836から、p=2 (D=28282・2=56564, B=28282+2=28284, C=383600)
1.41422=1.99996...
<ニュートン法>
・微分と接線の方程式を使います。
開平に限らず使えます。
√Aの値を求めたいときに、y=f(x)=x2-Aのグラフとx軸との交点xが求める真の値となります。
仮にx1=aで、グラフに接線をひいたときのx軸との交点をx2をすると、
f'(x1)=Δy/Δx=f(x1)/(x1-x2)となります。x1-x2=f(x1)/f'(x1) だから、
x2=x1-f(x1)/f'(x1)となりますね。
これを連鎖的に使えば、x1,x2,x3,と真の√Aに近づける可能性があります。
・ニュートン法を開平専用にしてみよう。
√Aを求めたいとき、f(x)=x2-A, f'(x)=2x。
xn=aとすると、xn+1=f(x)/f'(x)=(x2-A)/2x=x/2-A/2x
このように出口の数を入口に入れるという繰り返しは、
再帰的(Recursive)とか漸化式(Recurrence Formula)とか反復(Iteration)などと呼ぶ
考え方に繋がります。
(例)A=2のとき、xn=aとすると、xn+1==a/2-2/2a=a/2-1/a
x1=1とすると、x2=0.5+1/1=1.5
x3=1.5/2+1/1.5=1.4166
x4=1.4166/2+1/1.4166=1.4142
x5=1.4142/2+1/1.4142=1.414213562...
pythonの対話画面では直前の答えを「_ 」で参照できる。
だから、「_/2+1/_ 」と入力を続けると、どんどん精度をあげられるね。