6.ベクトルと平面図形
このページは電子ブック「探求 数学B・C」の一部です。
★定点と方向ベクトルで直線が決まる。
★2点から直線が決まるね。
★定点と法線ベクトルで直線がきまるね。
1.ベクトルと直線
<位置ベクトル>
原点を始点とするとき、終点Pに対してベクトルOPが定まる。これをPの位置[position]ベクトルという。
点の名前の大文字に対して、小文字でベクトルpとかく。
<分点ベクトル>
2点A,Bをm:nに内分する点Pの位置ベクトルは と成分によらず書ける。
だから、平面上だけでなく、空間内でも使える。
*頂点から遠い方の比をたすき掛けでかけることを確認しよう。
<重心ベクトル>
3点A,B,Cの重心ベクトルは3点に位置ベクトルの平均になる。
<3点A,B,Cが共線>
となるkがある。
<直線の方程式>
ベクトルの足し算が途中の点を省いた最短矢印であることから、
・2点A を通り方向[direction]ベクトルと平行な直線上の点Pは
とかける。
成分表示すると(x,y)=(ax+t dx, ay+ t dy) となるので、dy/dx=(y-ay)/(x-ax)
・2点A,Bを通る直線の方向ベクトルは だから、
2点ABを通る直線は となる。s=1-tとおくと 。
・2点A を通り法線[normal]ベクトルと垂直な直線上の点Pはとかける。
成分表示すると a(x-p)+b(x-q)=0(内積=0)
(例)「三角形OABの辺OAを1:2に内分する点をC,辺OBを3:2に内分する点をDとする。ベクトルADを5/3倍に延長したベクトルをAEとし、OEとBCの2直線の交点をFとするときFC:CB」は?
位置ベクトルの基準を変える。
Fを位置ベクトルの基準にする。
点Oの位置ベクトルをp()とすると、FEはFOのl倍()とおける。
点Cの位置ベクトルを()とすると、FBはFCのm倍()とおける。
をのに代入すると、
係数比較してm=l=2。これから、FC:CB=1:(2-1)=1:1
(別解)初等幾何で解く。(数学A)
△AODと△EBDが相似で、相似比はAD:DE=3:2=AO:EB。EB:OC=2:3÷(1+2)×1=2:1。
△FOCと△FEBも相似で、相似比はOC:EB=1:2=FC:FB。だから、FC:CB=1:(2-1)=1:1。
2.ベクトルの円
<円の方程式>
・ベクトルaからの距離が一定rである点Pの位置ベクトルは
これを成分で展開すると、座標を使った円の方程式になる。
絶対値の2乗は内積に等しいから、
・2点A,Bを直径とすると、円周角は直角になる。
だから、円周にある点Pに対して、ベクトルPAとPBの内積=0になる。
★三角形の面積をベクトルで求めるとカンタンだね
内心は角の2等分から
外心は辺の垂直二等分から
3.ベクトルと三角形
<3辺の長さと内積>
三角形ABCの頂点A,B,Cの対辺の長さをa,b,cとする。
内積
一方で、余弦定理から、a2=b2+c2-2bccosAだから、 となる。
だから、 。頂点を入れ替えると、
(別解)BC2=a2=
これからも、 。
<二等辺三角形と内積>
円周O上の2点A,BをとるとOA=OBで、ABの中点Mをとると、MOとABは垂直です。
だから、 底角が不明でも、
底角を起点とするのこりの頂点への2ベクトルの内積は、底辺の2乗の半分になりますね。
(例)
「AB=2√2,BC=√6,CA=2の三角形に外接する円Oをかくとき3つの内積」は?
三角形AOB、AOCはそれぞれ二等辺三角形となる。だから、底角からの2ベクトルの内積は底辺の2乗の半分で、
3辺の長さがわかっているときは、1頂点から2ベクトルの内積は余弦定理とコラボして、
<三角形の内心>
内心を作図するだけなら計算は不要です。
でも、位置を「辺の長さの情報を使い計量的に決められる」
というのがベクトルのメリットです。
三角形ABCの各頂点の位置ベクトル とし、頂点A,B,Cの対辺BC,CA,ABの長さをa,b,cとする。
内心は2本の角の二等分線の交点だから、角の二等分線定理が2回使えるね。
角の二等分定理「角の二等分線は対辺をとなりあう辺の比に内分する」から、
・角Aの二等分線と対辺BCの交点をDとすると、BD:DC=AB:AC=c:bだから、
Dの位置ベクトルは =
BD=
・角Bの二等分線と対辺ADの交点をIとすると、AI:ID=
Iの位置ベクトルは =
=
・もしも、位置ベクトルの起点を頂点Aにしたら、となり、
(例)「(AB,BC,CA)=(c,a,b)=(5,6,7)、 、内心がIならば のp,q」は?
p= 係数の比が7:5なのでDの内分比が保存されているね。
ADがAIまで 倍にAの対辺の6をぬかした分だけ遠ざかり、長さがちぢんでいるね。
<三角形の外心>
外心を作図するだけなら計算は不要です。
でも、位置を「辺の長さの情報を使い計量的に決められる」
というのがベクトルのメリットです。
三角形ABCの各頂点の位置ベクトル とし、頂点A,B,Cの対辺BC,CA,ABの長さをa,b,cとする。
外心Pは2辺の垂直二等分線の交点で外心Pを とする。
垂直二等分定理「辺の垂直二等分線は対辺の両端までの距離が等しい」
・辺ABの垂直二等分線と対辺ABの交点をMとすると、AM:MB=1:1だから、 =
内積,
これらが等しいので、
・辺ACの垂直二等分線と対辺ACの交点をNとすると、AN:NC=1:1だから、 =
内積,
これらが等しいので、
とおき、p,qを求めよう。c2p+dq=c2/2, dp+b2q=b2/2 から、……、
(例)「(AB,BC,CA)=(c,a,b)=(8,7,5)、 、外心Pならば のp,q」は?
だから、2(b2c2-d2)=2400から、
(例)「(AB,BC,CA)=(c,a,b)、 、角A=π/3, 外心Pならば のp,q」は?
だから、2(b2c2-d2)=3/2b2c2から、
ベクトルAPのベクトルb,cは対等なので、p,qを表す式は長さb,cを入れ替えた形になるね。
<オイラー線>
オイラー線の証明は初等幾何では大変かもしれませんが、
ベクトルでは内積計算などでわりと楽にできそうです。
三角形ABCの各頂点の位置ベクトル とし、基準点は外心とする。
3点外心E()E,H()、G()が1直線上にならぶ理由を考えよう。
から一直線に並ぶ。
ちなみに、Hは垂心で、3点E,H,Gを通る線はオイラー線と呼ばれている。
次はHが垂心になる理由だ。
Eが外心だから、
だから、なら、 つまり、BCが直径となり、A=Hで直角でHが垂心になる。
なら、AH⊥BCとなる。
同様に推論してまとめると、(A=H∨AH⊥BC)∧(B=H∨BH⊥CA)∧(C=H∨CH⊥AB)
HがA,B,Cのどれかに一致すれば、Hが垂心になる。
1つも一致していないなら、AH,BH,CHはすべて対辺と垂直だからHは垂心になる。
<三角形の不等式>
・2点A,Bを通る直線の方向ベクトルは だから、
三角形OABの周と内部は (s+tが0以上1以下で、sもtも0以上1以下)
(理由)
線分OA上の点Sはで表すことができる。
線分OB上の点Tはで表すことができる。
だから、三角形OABの周と内部の点は、線分ST上の点だから、 u+v=1でuもvも非負。
us+vt、us、vtは0以上1以下になるから。
<三角形の面積>
三角形のOABの面積は1/2|a||b|sinθ=
ベクトルa=(a,b),b=(p,q)と成分を仮定すると、
内積によるコサインの置き換えが、式の単純化に役立ったね。
最後の式は座標のたすき掛けが便利だ。
その上の式の先頭の根号の中は絶対値の積の2乗ー内積の2乗だから、次元が増えてもOKだね。