17.微分と関数
★微分係数は平均変化率の極限値
1.微分のもと
<微分の過去をざっくりと>
微積分[calculus]の土台になる微分(differentiaton)をふり返ってみよう。
複雑な関数でも瞬間的には3つの種類の変化しかない。増加傾向か一定傾向か、減少傾向のどれかだ。変化の傾向をつかむには、微小部分を直線とみなし、その傾き[slope]がわかればよい。これが「微分の発想」である。そして、微分するということは、関数からその傾きを表す導関数を求めることである。
デカルトからニュートンまで、関数とは「曲線という図形」だった。数式は表示手段であった。
オイラーからは、関数は「多項式という数式(無限級数)」だとした。図形はその表示手段となる。
コーシーからは、関数は「点集合Xから点集合Yへの1対1の対応(写像)」いう、関係そのものだとした。図形も数式も表示手段となる。
関数の捉え方が変わると、微分の表現も変わっていった。今の数学Ⅱで学ぶのコーシー以前のもので、数学Ⅲと大学数学でコーシー流にかく。微分を学ぶことで、関数の定義が明確になり関数の観察力が高まるでしょう。
<極限値>
xを限りなく大きくすると、1/xは限りなく0に近づく。
0は1/xの極限値[limit]で、 とかく。
xを限りなく0に近づけると、y=x²+x+1は限りなく1に近づく。
1はx2+x+1の極限値で、 とかく。
xを限りなくaに近づけると、y=f(x)が限りなくbに近づくとき、
bはf(x)の極限値で、 とかく。
※厳密には、bが関数f(x)の極限値だといえるのは、
xがaより小さいところから近づいても、aより大きいところから近づいてもf(x)が同じ値に近づき、
その値がbのときに限る。
ただし、b=f(a)になる必要はない。bと違う値c=f(a)に飛んでいても、bを極限値として扱う。
また、xがaに近づくときの極限値bは代入(plug)した値f(a)が使えるとは限らない。
(例)代入で出せる場合
極限値は代入でf(3)=-1とだせる。
(例)代入すると0/0になる場合
代入すると0/0になってしまう。
分子を因数分解(factoring)して約分(canceling)してから代入(plugging)で出せる。
(例)代入すると∞-∞になる場合
xが1/xになるような式変形して、0になる部分を作る。
=
<微分係数>
yの増分をΔy、xの増分をΔx(または、ただh)とかくことにする。
関数y=f(x)の平均変化率,差の商[average rate, defference quotient]=Δy/Δx=
(xがaからbに変化するとき)xの増分をb-a=hとすると、b=a+hとなるから、。
関数y=f(x)のaにおける微分係数,瞬間変化率[ instantaneous rate,differential coefficient]は
= でdf(x)/dx (x=a) =f'(a)とかく。
hを使うことで、差の商を分母がhで、分子がaとhだけの式に直せる。
すると、hで約すことができ、hに0を代入することで、hの影響のない式に直したりすることができる。
微分係数はy=f(x)のグラフのx=aの点における接線の傾き[slope of the tangent line ]。
<導関数>
関数y=f(x)の導関数[デリバティブ、derivative]
f'(x)は、
微分係数f’(a)のaを変数xのおきかえて得られるxの関数で、
dy/dx, df(x)/dx,f'(x),y', などとかく。
導関数を求めることを微分するという。
★導関数は傾きの関数
2.単純な導関数
<定数の導関数>
y=f(x)=cとすると、(c)'=0 [Constant Rule]
平均変化率
微分係数はf'(a)=0だから、a=xとおきかえても0。
はじめから導関数を求める。
<直線の導関数>
y=f(x)=ax+bとすると、(ax)'=a [Line Rule]
平均変化率
微分係数はf'(a)=aだから、a=xとおきかえてもx。
はじめから導関数を求める。
3.多項式の導関数
<単項式の微分>
nが2のとき(x2)'=2x
nが3のとき(x3)'=3x2
nが整数のとき(xn)'=nxn-1 [Power Rule]
結局xnの微分は(x+1)nのn-1次の項となり、係数はnC1=nとなる。だから、(xn)'=nxn-1
<多項式の微分>
・(f+g)'=f'+g'、(f-g)'=f'-g' [Sum,Difference Rule]
差の商がfの差の商とgの差の商に分解できるので、和の微分は項別の微分の和になる。
・倍は微分の外に残る(cが定数)
(c・f(x))'=c・f'(x) [constant Multiple Rule]
・このように微分という操作は加法と定数倍が外に出せるので、線形の変換である。
・したがって、因数分解された式の微分は展開して、項別に微分をすればよい。
・良い方法が見つからないときは、導関数の定義(差の商のhを0にできる式に変形して極限値)を求めよう。
(例) の導関数は?
差の商のh倍は、
=
導関数は
(例)(2x-3)3の導関数は?
展開して、(2x)3+(-3)3+3 (2x)(-3)(2x-3)=8x3-27-36x2+54xだから、
項別微分の和は、24x2-72x+54。
(例)f(x)=x3-3x2-6x-2のxが0から4までの平均変化率とf’(c)が等しくなるcは?
f'(c)=3c2-6c-6が平均変化率=(f(4)-f(0))/(4-0)=-2と等しい。
3c2-6c-6+2=3c2-6c-4=0 c=3+-√(9+12)/3
(例)「多項式f(x)の最高次数係数が1で(x-1)f'(x)=2f(x)+8となるf(x)」は?
最高次数項に着目しよう。f(x)がn次式ならば、最高次数項はxnで、f'(x)=nxn-1である。
最高次数項の係数比較をすると、x・nxn-1=2xnより、n=2。だからf(x)=x2+ax+bとおける。
(x-1)f'(x)=(x-1)(2x+a)=2x2+(a-2)x-a=2x2+2ax+2b+8 となりa-2=2aから、a=-2、b=(-(-2)-8)/2=-3。
f(x)=x2-2x-3
4。微分の合成
<積の微分>
・(fg)'=f'g+fg' [Product Rule]
(理由)
p(x)=f(x)g(x)とすると、
p(x)の差の商のh倍は、
=
p(x)の差の商の極限値、つまり、導関数は、
<関数の逆数の微分>
・(1/f)'=-f'/f2 [Reciprocal Rule]
(理由)
p(x)=1/f(x)とすると、
p(x)の差の商のh倍は、
p(x)の差の商の極限値、つまり、導関数は、
<分数関数、商の微分>
・(f/g)'=(f'g-fg')/g2 [Quotient Rule]
(理由)
p(x)=f/g=f・1/gとすると、
(f/g)'=
<合成関数の微分>
・ [Chain Rule] 分数のかけ算のように連鎖的にかける。
y=y(x)とすると、
(z(y(x)))'
dz(y(x))/dx=dz(y)/dy・dy(x)/dx=z'(y(x))・y'(x)。
玉ねぎの皮を1枚ずつ裏返してむく逆算と似ているイメージ。
剥がすときの変数はカッコの中全体だから、微分したあとでもカッコの中が残る。
合成関数の微分を連鎖的に使える。
・ds/dp=ds/dr・dr/dq・dq/dp
(s(r(q(p))))'=s'(r(q(p)))・r'(q(p))・q’(p)
(例)z= の導関数は?
z=y1/2,y=4x+5のように、zを合成関数としてみる。
z'=z'(y)・z'==
(例)z=(2x-3)3の導関数は?
z=y3,y=2x-3のように、zを合成関数とみる。
z'=z'(y)・y'=3y2・2=6(2x-3)2=6(4x2-12x+9)=24x2-72x+54。