1。多項式の展開と因数分解
1.3乗展開から2項定理へ
<3乗展開>
(a+b)の3乗は、(a+b)(a+b)(a+b)の展開になる。
(左)(中)(右)の()の中をaかbを選んでかける。
aaaは+の前だけ選び1通り、bbbは+の後ろだけで1通り。
aab左か中か右のどれかでbを1回選ぶから3通り、
abbも同じ理由で3通り。だから、
(a+b)3=a3+3a2b+3ab2+b3
bに-bを代入すると、bの奇数次だけ符号が変わる。だから、
(a-b)3=a3-3a2b+3ab2-b3
(例)a=x,b=1とすると、、
<2項定理>
(a+b)のn乗の展開式をaの降下べきの順にならべると、
係数はパスカルの三角形と同じになる。
1乗:1,1
2乗:1,2,1
3乗:1,3,3,1
4乗:1,4,6,4,1
5乗:1,5,10,10,5,1
6乗:1,6,15,20,15,6,1
bの指数がr,aの指数がn-rになるときの係数はnCrである。
これを[2項係数(binomial coefficients)]という。
aとbの指数の和=nに着目しよう。
理由はbがr乗になるのは、n個のカッコからbをr個選ぶ組み合わせと等しく、nCrになるから。
n乗:nC0=1,nC1=n,nC2,........,nCn-1=n,nCn=1となり、一般項はnCr aqbr (q+r=n)
(例)(x+1)20の展開式のx17の係数は?20C20-17=20・19・18/3!
(例)(x+1/2)8の展開式のx6の係数は? 8C8-6(1/2)8-6=28・1/4=7
(例)「101100の下5けたの数字列」は?10001
(理由)x=100とするとx3=1000000だから、(x+1)100の展開式のxの指数が2以下の係数だけ求める。
x2の係数100C2=100・99/2=4950, xの係数100C1=100,定数項1。
49500000+10000+1=49510001の下5けたが1001だから。
(例)「nC02+nC12+......+nCn2=2nCn」となる理由は?
(実験してみる)(x+1)6=(x+1)3(x+1)3でx3の係数は6C3=3C0×3C3+3C1×3C2+3C2×3C1+3C3×3C0
3C3-i=3Ci これから、3C02+3C12+3C22+3C32=6C3
(一般化する)(x+1)2n=(x+1)n(x+1)nでxnの係数は2nCn=nC0×nCn+nC1×nCn-1.....+nCn×nC0
nCn-i=nCi これから、nC02+nC12+......+nCn-12+nCn2=2nCn
(例)「19971997を9で割ったあまり」は?
9の倍数の1998=xとすると、(x-1)1997の展開式のxの指数が1以上なら9で割り切れるから、
定数項を求めれば良い。(-1)1997=-1。-1≡9-1=8(mod9)から8。
(例)「2nC0+2nC2+......+2nC2n」は?
(実験してみる)(x+1)6の展開のx0,x2,x4,x6の係数の和1+15+15+1=32。残りの係数の和6+20+6=32。
32+32=64=(1+1)6 xの偶数指数の係数とxの奇数指数の係数が等しいから、26÷2になる。
または、(1+x)5の係数1,5,10,10,5,1を使って、
パスカルの三角形を意識して(1+x)6の偶数指数の係数和を作ると1+(5+10)+(10+5)+1になる。
どちらにしても25=32
(一般化する)(x+1)2nの展開のxの偶数指数の和になり、(x+1)2n-1の全指数和
になるから、x=1を代入して、(1+1)2n-1=22n-1
(ちなみに、(x+1)2nの展開式にx=1を代入した場合とx=−1を代入した場合を比較する方法もある。)
<多項定理>
(a+b+c)nの展開式の一般項はK apbqcr (p+q+r=n)
(理由)K=nCp・(n-p)Cqとなる。
n個のカッコからaをp個選び、残ったカッコからbをq個を選べばよいから。
あとは式変形で、
(例)(1+x+x2)9の展開式のx3の係数は?
a=x0,b=x1,c=x2として、x3=apbqcr(p+q+r=9)となるのは、
3=0・p+1・q+2・rのとき。q,rを先に決めてpも求めると、
p,q,r=(6,3,0),(7,1,1)の2通り。
2.2項展開の変形
<3乗和>
3乗和の因数分解公式として、
(理由)を利用する。
a3+b3=(a+b)3-3ab(a+b)=(a+b)((a+b)2-3ab)=(a+b)(a2+(2-3)ab+b2)=(a+b)(a2 -ab+b2)
(例)x3+1=(x+1)(x2-x+1)(例)2(a+b)3-a3-b3の因数分解は?
2(a+b)3-(a+b)(a2-ab+b2)=(a+b)(2(a+b)2-a2+ab-b2)=(a+b)(a2+5ab+b2)
<3乗差>
3乗差の因数分解公式として、
(理由)を利用する。
a3-b3=(a-b)3+3ab(a-b)=(a-b)((a-b)2+3ab)=(a-b)(a2+(-2+3)ab+b2)=(a-b)(a2 +ab+b2)
または、上式のbに-bを代入すると、bの奇数次だけ符号が変わる。
(例)x3-1=(x-1)(x2+x+1) (例) a6-64b6の因数分解は?
x=a3, y=8b3とおくと、x2-y2=(x+y)(x-y)=(a3+8b3)(a3-8b3)
=(a+2b)(a2-2ab+4b2)(a-2b)(a2+2ab+4b2)
=(a+2b)(a-2b)(a2+2ab+4b2)(a2-2ab+4b2)
3.3項展開の変形
<3項の展開>
a1b1c0の係数はだから、
(a+b+c)2=a2+b2+c2+2(ab+bc+ca)
a2b1c0の係数は、a1b1c1の係数はだから、(a+b+c)3=a3+b3+c3+3a2(b+c)+3b2(c+a)+3c2(a+b)+6abc
<3項の展開の変形>
(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)=a3+b3+c3-3abc
3項3乗和の因数分解の公式として、
a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)
(理由)
(a+b+c)3=
=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)+3(a+b+c)(ab+bc+ca)
=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)+3a2(b+c)+3b2(c+c)+3c2(a+b)+9abc
上の2式の左辺(a+b+c)3が等しく、下線部分も等しいので、それ以外も等しい。
(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)+9abc=a3+b3+c3+6abc
だから、(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)=a3+b3+c3+(6-9)abc=a3+b3+c3-3abc
(例)(x-y)3+(y-z)3+(z-x)3の素因数分解は?
a=x-y,b=y-z,c=z-xとおくと、a+b+c=0となる。だから、a3+b3+c3-3abc=0
a3+b3+c3=3abc=3(x-y)(y-z)(z-x)
3.式の割り算と分数式
<整式の割り算>
多項式A,B,Q,Rの間にA÷B=QあまりR(Rの次数がBより低い)
つまり、A=BQ+Rの関係があるとき、A÷BのQが商、Rが余り。
<分数式>
多項式A,Bの割り算A÷Bを分数B分のAの形にかくと、式の分数ができる。これを分数式という。
分数式の加減は通分して、最後は約分する。
(例)