9.関数の極限
このページは電子ブック「探求 数学Ⅲ」の一部です。
1.0/0が1になる?
<0/0は不定形>
x→0のとき、
sinx,tanx,1-cosx、x,x2はすべて→0。
だから、それらを分母、分子にする関数は代入[plugging]によって極限値を求めようとすると、
sinx/x, (1-cosx)/x2,tanx/xは、0/0となってしまう。
これを不定形という。
x→aのときの0/0の極限値を推定するためには、xにaを代入するのではなく、
aに近い小さな数を代入[plug]したときの分母と分子の比の値から推測できることがある。
これは収束が速いとき。
(例)
「x→5のときのf(x)=(x2-25)/(x-5)の極限値」を推測すると?
x=5.0002を入れると、f(x)=10.0002。極限値は10と推測できるね。
(例)
「x→6のとき、p(x)=(x2-5x-6)/sin(x-6)の極限値」を推測すると?
x=6.000003を入れると、p(x)=7.000002。極限値は7と推測できる。
(例)
「x→0のときのf(x)=(1/(x+4)-1/4)/xの極限値」を推測すると?
x=0.0001を入れるとf(x)=-0.0624998となり極限値は-1/16と推測できるね。
<sinx/x→1>
x→0のときsinx/x→1
(理由1)
これは、教科書などによくみかける図形を使った説明ですよ。
1と1でサンドイッチして1にする作戦です。
角Aがx(ラジアン)で、AB=AC=1の二等辺三角形ABCをかくと弧BC=xとなる。
x>0のとき、
角Aが共通でBが直角の直角三角形ABDをかく。
△ABCの面積<扇形の面積<△ABDの面積となるので、1/2・1・1sinx<1/2・1・x<1/2・1・tanx
式変形にようって、sinx/xは、cosxと1に挟まれる。そしてx→0のときのcosxの極限値=1。
だから、挟み撃ちでx→0のときのsinx/xの極限値=1
x<0のときは、t=-xなどとおいて、式変形で証明できる。
(理由2)
テーラー展開を使うと、
sinx=x1/1!-x3/3!+x5/5!-x7/7!+.......
x→0のとき、
|sinx/x-1| <= |((x-x3/6+x5/120)/x-1|=|-x2/6+x4/120|<|x2/6|→0
また、
<(1-cosx)/x2→1/2>
x→0のとき(1-cosx)/x2→1/2
(理由1)オイラー[Euler]はx=nzとおき、
(cosz+isinz)n=cosnz+ i sinnzを証明した。
これを利用することで、オイラー[Euler]は各種の級数展開を見つけた。
左辺を2項定理展開した実部cosnz=(cosz)n-nC2(cosz)n-2(sinz)2+nC4(cosz)n-4(sinz)4-......
x=nzを一定にしたまま、nを∞にし、zを無限小にする。
cosz≒1, sinz≒z, n(n-1)≒n2,n(n-1)(n-2)(n-3)≒n4, だから、
cosnz=1- n2/2! 1・z2+n4/4! 1 ・z4-.....
cosx = 1 - x2/2! + x4/4!- .....となる。
いわゆるテーラー展開,マクローリン展開を使うと、
cosx=1-x2/2!+x4/4!-x6/6!+.......
x→0のとき、
|(1-cosx)/x2-1/2| <= |(1-(1-x2/2+x4/24))/x2-1/2|=|x2/24|<|→0
(理由2)
x→0のとき、
(1-cosx)/x2=(1-cosx)(1+cosx)/(1+cosx)x2
=(sinx/x)2・1/(1+cosx)→12・1/(1+1)=1/2
(理由3)
ロピタルの定理[l'Hopital's theorem]で、
商の微分ではないので注意。分母と分子をそれぞれ同じ回数微分しても、極限値は同じ。
lim ((1-cosx)/x2)=lim(sinx/2x)=1/2 lim(sinx/x)→1/2・1=1/2
<tanx/x→1>
x→0のとき、tanx/x→1
(理由)
x→0のとき、
tanx/x=(sinx/x)・1/cosx→1・1/1=1。
★eはどこ??
2.指数・対数はeが主役
<極限値の演算>
和・差・定数倍・積・商の極限値は、極限値の和・差・定数倍・積・商で求められる。
ただし、商の場合は分母の極限値は0でない。
<極限値がe>
自然対数e=2.718281828....は2つの関数の極限値として有名だ。
x→∞のとき、(1+1/x)x→e。
h=1/xとおくと、x=1/h。
x→∞のとき、h→0となり、そのとき、(1+h)1/h→e
eを底とする指数関数はy=ex。e0=1から(0,1)を通り、定義域xは全実数で値域y>0
その逆関数は、eを底とする対数関数でy=loge(x)。
(1,0)を通り、定義域はx>0(真数条件)、値域は全実数。
eを省略したlogxと書いたり、lnxとかく。
<eと極限>
x→0のとき、
ln(1+x)/x→1
(ex-1)/x→1
(理由)
h→0のとき、
ln(1+h)/h=1/h loge(1+h)=loge(1+h)1/h=logee→1。だから、ln(1+x)/x→1。
また、逆数も→1となるから、h/ln(1+h)→1。
x=ln(1+h)とおくと、x=loge(1+h) だから、1+h=ex
x→0のとき、h/ln(1+h)=(ex-1)/x→1。
<極限値のリユース>
有名な極限値を再利用できる形に式を変形したり、変数を変形してみよう。
・x→0のとき、
sinx/x→1、
(1-cosx)/x2→1/2,
tanx/x→1、
ln(1+x)/x→1、
(ex-1)/x→1
(1+x)1/x→e
・x→∞のとき、
(1+1/x)x→e。
指数関数の導関数(ex)'=ex
h→0のとき、
d(ex)/dx=(f(x+h)-f(x))/h=(ex+h-ex)/h=ex・(eh-1)/h→ex・1=ex
対数関数の導関数(logx)'=1/x(x>0)
h→0のとき、
d(logex)/dx=(f(x+h)-f(x))/h=(loge(x+h)-logex)/h=1/h・loge(x+h)/x=1/h・loge(1+h/x)
=1/x・x/h・loge(1+h/x)=1/x・loge(1+h/x)x/h→1/x・1=1/x。
(例)
「x→∞のとき、→0」の理由は?
x<2xから、x/ex<2x/ex=(2/e)x→0だから、x/ex→0
(例)
「x→∞のとき、→0」の理由は?
h=exとおくと、x=loghとなる。x/ex→0からlogh/h→0。
(例)
「x→1のとき、の極限値」は?
分母を有理化する。(x−1)(√x+1)/(√x-1)(√x+1)=(√x+1)→1+1=2
(例)
「x→6のとき、p(x)=の極限値」は?
h=x-6とおくと、x2-5x-6=(x+1)(x-6)=(h+6)hだから、h→0のとき、 p(x)=(h+6)・→7・1=7
(例)
「x→∞のとき、p(x)=の極限値」は?
p(x)=x(log(1+2/x)=2(x/2)(log(1+1/(x/2))=→2・logee=2
(例)
「初項 公比 の等比数列の和snのn→∞ときの極限値」は?
sn
・n→∞なら、
h=1/nとおくと、h→0で、1+coshπ→2、
・x→0なら、 だから、
まとめると、sn→(e-1)=
が極限値だね。
3.関数の連続性
関数f(x)がx=aより小さい方からaに近づくときの極限値αを左極限値(LimitLeft)といい、
x→aー0のときf(x)→α。α=f(a-0)
関数f(x)がx=aより大きい方からaに近づくときの極限値βを右極限値(LimitRight)といい、
x→a+0のときf(x)→β。β=f(a+0)
f(a-0)=f(a+0)のとき、極限値が存在するという。
x→aのときf(x)→α=β。
<連続性>
関数y=f(x)がx=aで連続であることは、
x=aが定義域に入っているので、値f(a)が決まる。
y=f(x)はx→aのとき極限値αを持つ。
α=f(a)である。
関数y=f(x)がxの定義域が開区間(a,b)のすべての点xで連続ならば、
開区間(a,b)で関数は連続[continuous]だ。