変換〜ベースや次元を単純化しよう
1.線形な写像
線形な空間というとき、比例というイメージで捉えることができたね。
写像[mapping]というは対応づけ、移し替え、つなげ方、操作、関数のことです。
<線形な写像>
線形な写像というのは、空間と空間のつなげ方、移し替え方が
やはり比例のようになるもののことだね。
また、空間を同じ空間自身に移す線形写像を線形な変換とも言います。
和の像が像の和になり、定数倍の像が像の定数倍になり、
原点の像が原点なら
比例と同じだから、線形写像といえるでしょう。
原点が動かない合同変換は、みな線形写像になるはずだね。
恒等変換、
回転移動、
x軸対称移動、
y軸対称移動、
原点対称移動、
原点を通る直線y=mxについて線対称移動(鏡映変換)
また、相似もOKだ。
原点が動かなければね。
位置ベクトルをk倍する相似変換
<線形写像の定義>
RnからRmへの写像fが、a,b∈Rn,k∈Rにたいして、
f(a+b)=f(a)+f(b), f(ka)=kf(a)が成り立つとき、fは線形写像(1次変換)だ。
n=mのとき、線形変換と呼ぶ。
(例)
R2の写像f:(k,l)→(3k-l, -2k+3l)は線形変換か?
x=、A=とおくと、
f(x)=Axとかけるから、行列の分配法則と定数倍の法則と積の性質より、
f(a+b)=A(a+b)=Aa+Ab=f(a)+f(b), f(ka)=Aka=kAa=kf(a)。だから、線形変換だ。
(例)
R2の線形変換fで、標準基底e1,e2をf(e1)=,f(e2)=とする行列Aは?
Ae1== , Ae2=とだから、これを1つにまとめると、
A(e1, e2)=AE=A=
または、
x=、=ke1+le2とおくと写像の線形性から、
f(x)=kf(e1)+lf(e2)=k+l == =Ax
A=
(例)
R2の線形変換fで、→ , →とする行列Aは?
A= , A=まとめると、A
のように、行列B,Cを名付ける。
AB=Cから、B-1を右からかけて、
A=CB-1== =
(例)
R2の線形変換fの標準基底(列ベクトルe1,e2)の表現行列がA=のとき、
新基底(列ベクトルu1=,u2= )での表現行列Bは?
①まず、基底の取り替え行列Pを求めよう。
(u1,u2)=(e1,e2)Pとすると、(, )=EP=Pだから、P= だね。
あとで使うから、逆行列を計算しておこう。P-1=1/(1-2){{1,-2},{-1,1}}=
② e1,e2に対しては、(f(e1),f(e2))=(e1,e2)A=(e1,e2)
u1,u2に対しては、(f(u1),f(u2))=(u1,u2)B
③ ①から、(u1,u2)=(e1,e2)P=(e1,e2) =(e1+e2, 2e1+e2)なので、
(f(u1),f(u2))=(f(e1+e2), f(2e1+e2))=(1f(e1)+1f(e2),2f(e1)+1f(e2))=(f(e1),f(e2))P
④ ①から、さらに(u1,u2)=(e1,e2)Pの両辺に右からP-1をかけて、(u1,u2)P-1=(e1,e2)
以上の4つの情報から、代入をくり返してみよう。
③(f(u1),f(u2))=(f(e1),f(e2)) P
② =(e1,e2) A P
④ =(u1,u2)P-1 A P
つまり、(f(u1),f(u2))=(u1,u2)P-1 APとなるが、②から(f(u1),f(u2))=(u1,u2)Bだから、
B=P-1AP= =
結果論ですが、
(u1,u2){{1,0},{0,4}}=(u1,4u2)だから、u1方向は変えず、u2方向が4倍になっているとわかるね。
(この秘密はAを対角化してみるとわかるでしょう。Aの固有値が1,4で対応する不動直線がy=x,y=1/2x)
(一般化)
基底xから新基底Xに変換する行列がPで、線形変換fのxでの表現をA,Xでの表現をBとすると、
B=P-1APになることのイメージを作る。
A
x⇒⇒⇒f(x)
↓ ↑
↓P ↑P-1
↓ ↑
X⇒⇒⇒f(X)
B
ベースxでfしてf(x)にするには、最短でAをすればよいね。
ところが、遠回りもできる。
ベースxからPしてベースXに移動してからBすることでXにfをする。
まだ、ベースがXだから、ベースをxにもどすためにPの逆をる。
つまり、PしてBしてP-1することが、Aすることといっしょ。
PしてBしてP-1することは、
行列ではP-1BPと右から順に作用するから、
B=P-1APとなるね。
(例)
線形変換fの基底での表現行列がA= のとき、
新基底 での表現行列Bは?
変換行列は(c, d)=(a,b)Pから、 となるので、
P=
B=P-1AP=
線形変換での基底変更のよさを点Cを動かして実感しよう
2.多項式の線形変換
多項式のベクトル空間でも
線形変換の表現行列や固有空間をさぐってみよう。
<多項式の表現行列>
2次の多項式全体のベクトル空間R[x]2で、基底を{1,x,x2}の3つにするとき、
線形変換T:f(x) → f'(x)x+f(0)x2+f(1)とする。
このTを表現する行列Aを求めるには、どうする?
まず、基本となる3つの基底の変換先を考えてみよう。
1=f(x)=1+0xとおくと、f'(x)=0, f(0)=1+0=1, f(1)=1+01=1と係数が決まった。
T:1 → 0x+1x2+1=1+x2={1,0,1}
x=f(x)とおくと、f'(x)=1,f(0)=0,f(1)=1と係数が決まった。
T :x →1x+0x2+1=x+1=1+x={1,1,0}
x2=f(x)とおくと、f'(x)=2x,f(0)=0,f(1)=1と係数が決まった。
T :x →2xx+0x2+1=2x2+1=1+2x2={1,0,2}
(T(1),T(x),T(x2))=(1+x2,1+x,1+2x2)={1,x,x2}{}
A={}
<多項式の変換の固有空間>
2次の多項式全体のベクトル空間R[x]2で、基底を{1,x,x2}の3つにするとき、
線形変換T:f(x) → f(1+2x)とする。
このTを表現する行列Aを求めて、Tの固有値と固有空間をさぐろう。
まず、基本となる3つの基底の変換先を考えてみよう。
1=f(x)=1+0xとおくと、f(1+2x)=1+0・2x=1だから、T:1 → 1={1,0,0}
x=f(x)とおくと、f(1+2x)=1+2xだから、T :x →1+2x={1,2,0}
x2=f(x)とおくと、f(1+2x)=(1+2x)2=1+4x+4x2だから、T :x →1+4x+4x2={1,4,4}
(T(1),T(x),T(x2))=(1,1+2x,1+4x+4x2)={1,x,x2}{ }
A={ }
=
固有多項式|A-tE|=(1-t)・|{{(2-t),4},{0,(4-t)}}|=(1-t)(2-t)(4-t)=0から、固有値はt=1,2,4。
t=1のとき(A-E)x=0から、
{{0,1,1}, x=0 となるのは、基底{1,x,x2}の係数が{1,0,0}のときだけ。W1={k|k∈R}
{0,1,4},
{0,0,3}}
t=2のとき(A-2E)x=0から、
{{-1,1,1}, x=0 となるのは、基底{1,x,x2}の係数が{1,1,0}のときだけ。W2={k(1+x)|k∈R}
{0,0,4},
{0,0,2}}
t=4のとき(A-E)x=0から、
{{-3,1,1}, x=0 となるのは、基底{1,x,x2}の係数が{1,2,1}のときだけ。W4={k(1+2x+x2)|k∈R}
{0,-2,4},
{0,0,0}}
3.商空間で同型写像にする。
<同型写像>
でも、点のあつまり、
たとえば、直線や平面がごそっと、みんな原点にうつったらどうしましょう?
原点にうつったものたちの、「原点のもと」を1つにまとめてしまえる。
「原点のもと」のことを整数の分類のときの倍数のように見てみる。
倍数の集合で割った余りで、整数を分類するのが剰余系だったね。
この剰余系のように、空間をもとになる集合で割った余りで系に分割してみよう。
すると、「原点のもと」以外の集合は、原点でないところにズレて移動する。
「原点のもと」を0扱いするように、原点を通る線や面で空間を切る。
それと平行に空間を切っていき、その切ったものがどう対応するのか?
という対応関係を調べていくと、
線→点
面→点
のように次元がちがっても、対応関係が1:1になる写像、同型写像ができる。
というお話です。
詳しくは次の用語が3種の神器になりますよ。
<Imf>
VはからV’への線形写像fで、
Imfは線形空間Vのfによる像[Image of function]で、f(V)のこと。
ImfはV'の部分になる。
<Kerf>VはからV’への線形写像fで、
Kerfはf-1(0)、つまりVのうちfの像が0になる部分。核[Kernel to zero]という。
<合成写像>
写像fを表現するのが、n次をm次にうつすm行n列行列A
写像gを表現するのが、m次をl次にうつすl行m列行列B
g(f(x))つまり、g○fの表現行列はBAである。
(例)
T:R3→R2の線形写像が零ベクトルになる解空間が線形空間になる。
列ベクトルu=のとき、つまり、同次連立方程式を、
T(u)=u = 0= とするときの解空間を求めてみよう。
係数行列を簡約化する。
1行目を-2倍して2行目にたす。
{{1, -2, 3}, →{{1, -2, 3},
,{2,-3,5}} {0, 1,-1}}
2行目を2倍して1行目にたす。
{{1, -2, 3}, →{{1, 0, 1},
{0, 1,-1}} {0, 1,-1}}
最後の係数にベクトルuをかけて、
2行目からy-z=0, x+z=0。これから、(x,y,z)=k(1,-1,-1) これが解空間で、基底ベクトルは
(1,-1,-1)とすると、これ1個。退化した次元は1。
(x-0)/1=(y-0)/-1=(z-0)/-1ともかけるから、解空間は
原点を通り、方向ベクトル(1,-1,-1)の直線だから、線形空間だね。
この写像Tの像で0に写った部分、核(Kerf)が (x,y,z)=k(1,-1,-1) で、dim(kerf)=1.
<同型写像と次元>
VからV’への写像が同型写像(全単射、上への1対1)になるのは、次元が不変のとき。
平面が直線Imfにうつるとき、
0の逆元、Kerfと平行な直線の集合VF={K0,k1,k2,k3,....}をV内にとる。
k0=kerfとすると、直線k0の各点はすべて、V'の0に移る。
直線k1の各点は、V'の直線Imf上の0とはちがう点1にうつる。
直線k2の各点は、V'の直線Imf上の0とはちがう点2にうつる。
直線k3の各点は、V'の直線Imf上の0とはちがう点3にうつる。
直線k4の各点は、V'の直線Imf上の0とはちがう点4にうつる。
。。。。。
VFはVのKerfによる「商空間」といい、V/Kerfとかく。
この場合、
dimV=2,
dim(Kerf)=1
dim(Imf)=1
dimV-dim(Kerf)=dim(Imf)
となっている。
dim(Imf)=dim(rankA)でもあるので、
dimV=dim(Kerf)+dim(rankA)
とも書けるね。
dimV=2,
dim(Kerf)=1
dim(Imf)=dim(rankA)=1
の場合はfによって、平面(dimV=2)が直線(dim(Imf)=1)にうつるなら、
残った次元は2-1=1になる。この次元が核の次元(dim(Kerf)=1)になるということだね。
だから、もしも、空間が(dimV=3)が直線(dim(Imf)=1)にうつったとする。
残った次元は3-1=2になる。この次元が核の次元2になるということだね。
また、
dim(V/Kerf)=dim(Imf)だから、
V/KerfとImfは同型と言える。
(例)
R2からR2への線形写像
fの表現がA=
{{-1,2},
{3,-6}}
のとき、
1行目の3倍を2行目にたすと、
A'=
{{-1,2},
{0,0}}となるから、rankは1。
だから、dim(Imf)=dim(rankA)=1(Imfは直線)
Ax=0とする。x=(x,y)とおくと、
-x+2y=0。3x-6y=0。
x=2k,y=kとおくと満たす。
kerfはy=1/2xKerfである直線y=x/2はV'の(0,0)に移る。
dim(kerf)=1(Kerfも直線)
(X,Y)=(-x+2y, 3x-6y) Y=-3X
だから、Imf :y=-3x。
dim(Imf)=1(Imfは直線)
V/KerfというVを直線Kerfと同じ傾きの直線の集合に分割する。
直線を移動すると、その写像f(V/Kerf)はImf上の点となり、点が移動するね。