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変換〜表現行列がもつ個性とは

固有値で対角行列を作ろう

1.固有値と固有ベクトル

ある方向の直線y=2xつまり、= があるとして、 変換をしたらどうなるか? T(x)==2xT(x)=2xになったね。 直線上の点が座標が2倍になるだけで、もとの直線上にとどまっている。 ということは、このy=2xは不動直線ということになるね。 このTに対して不動直線が他にもないかを探したいときはどうしたらいいだろうか? 一般化した形で問題を設定してみよう。 n次行列Aに対してn次ベクトルxと変数λがあり、 Ax=λ となるときのλをAの固有値[EigenValue]、λに属するxを固有ベクトル[Eigenvector]という。 λに属する固有ベクトル全体と零ベクトルがなす、部分空間を固有空間という。 これをの条件で解けるとすると (A-λEx=0から |A-λE|=が条件となる。 左辺det(A-λE)をAの固有多項式といい、固有多項式=0の方程式をAの固有方程式という。 変数λについてのAの固有多項式χA(λ)など変数tについてのAの固有多項式χA(t)などとかく。 ・ケイリーハミルトンの定理 このとき、変数λやtやxなどの文字の代わりに行列Aを、 定数項の文字にあたる文字の0乗、つまり、1の代わりに行列Eを 代入すると、λA(A)=O となるという定理 ・固有方程式の解 この解λ1,λ2,...が固有値で、これら対するベクトルx1,x2,...が、固有ベクトルで線形独立になる。 それぞれに対する固有空間W1,W2,W3,....について、 固有空間の和W1+W2+…は、各空間の共通部分が0ベクトルになるから直和 である。固有空間の和は、固有ベクトルは独立しているから、その直積空間W1✕W2✕… と同型になる。 <行列の対角化> n次行列Aの固有方程式の解λ1,λ2,...,λnが固有値で、これに対する列ベクトルが、x1,x2,...xn。 すると、n個の等式ができるね。 Ax1=λ1x1Ax2=λ2x2、。。。。。、Axn=λnxnA[x1,x2,....,xn]=[λ1x1, λ2x2,.......,λnxn] =[x1,x2,.....,xn] 行列P=[x1,x2,...,xn]を使って、 AP=PQとかけるね。 Q=P-1AP 対角成分がすべて固有値で、他の成分は0。 Pを変換行列、Aを対角化可能な行列という。 Aと対角化された行列Bを相似ということもあるね。 対角化[diagonalization]するだけなら、固有値がわかれば終了だ。 しかし、行列を表現行列としてみれば、その写像が不変にする方向ベクトル 固有ベクトルどうしの関係性、写像のしくみを明確にするためには固有ベクトルを考えることは とても大切だね。 (例) A= の対角化は? A-λE = det(A-λE)=(λ-1)(λ-4)+2=λ2-5λ+6=(λ-2)(λ-3)から、 固有値はλ=2,3だから、 対角化はすぐできるね。 となるはず。 (確認) λ1=2ならA-2E= -x+2y=0 となる列ベクトルはx1= = λ2=3ならA - 3E= -x+y=0 となる列ベクトルはx2= = P=[x1,x2]= 固有列ベクトルを2つまとめたものが変換行列Pだね。 P-1=1/1 だから、 P-1AP= = = と固有値を並べた行列になった。対角化できた。

基底を正規直交化しよう

2.正規直交基底

<直交行列> 内積の定義された空間を、線形計量空間と呼ぶことがあります。 ベクトルaにそれ自身をかけた内積の√をノルムといい、ベクトルの大きさを表します。 基底が直交する場合、直交基底といいます。 基底が正規(ノルムが1)の基底を正規基底といいます。 だから、正規直交基底というのは、大きさが1で直交する基底です。 Rn正規直交基底n個e1,e2,...,enとしよう。 ベクトルu,vをこの基底を使い、u=[a1,a2,...,an],v=[b1,b2,...,bn]とすると、 eiei=1, eiej=0(i≠j)なので、 u・v=(a1e1+a2e2+....+anen)(b1e1+b2e2+.....+bnen)=a1b1+a2b2+....+anbn 内積は,標準基底と同様に同じ位置の成分どうしの積の和になるね。u・v=∑akbk 列ベクトルとして並べた行列U=[e1,e2,...,en] を直交行列という。 UU=UU=Eとなる。だから、tU=U-1 <シュミット法> a1,a2,a2を正規直交基底u1,u2,u3に直そう。 正規化して、1つめは u1=a1/||a1|| a2u1への正射影(u1・a2) u1を始点にし、 a2を終点にしたベクトル b2=a2ー(u1・a2 ) u1 。 これを正規化して、2つめは u2=b2/||b2|| a3u1,u2への正射影(u1・a2)u1 と(u2・a2)u2の和を始点にし、 a3を終点にしたベクトル b3=a3ー{(u1・a3 ) u1+ (u2・a3 ) u2} 。 これを正規化して、3つめは u3=b2/||b2|| (例)「a1=[1,1,0],a2=[1,2,1],a3=[1,0,1]を正規直交基底u1,u2,u3に直そう。 正規化してu1=a1/√(12+12+0)=1/√2 a1=(1/√2,1/√2,0) =1/√2(1,1,0) b2=a2-(a2・u1)u1=(1,2,1)-1/√2(1+2+0)(1/√2,1/√2,0)=(1,2,1)-3/2(1 , 1, 0) =1/2(-1, 1,2) 正規化してu2=b2/(1/2√(1+1+4))=2/√6・1/2(-1, 1,2) =1/√6(-1, 1,2) b3=a3-{(a3・u2)u2+(a3・u1)u1}=a3-{1/√6(-1+0+2)u2+1/√2(1+0+0)u1} =a3-{1/√6・1/√6(-1, 1,2)+1/√2・1/√2(1,1,0)} =(1,0,1)-{1/6(-1,1,2)+1/2(1,1,0)}=(1,0,1)-1/6(2,4,2)=1/6(4,-4,4) =2/3(1,-1,1) 正規化してu3=b3/(2/3√3)=√3/2b3=√3/2・2/3(1,-1,1) =1/√3(1,-1,1)直交確認してみよう。 (1,1,0)・(-1,1,2)=-1+1+0=0 (1,1,0)・(1,-1,1)=1-1+0=0 (1,-1,1)・(-1,1,2)=-1-1+2=0

3.対称行列の対角化

AをTで対角化してQにできたとしよう。T-1AT=Q 対角化したあとのQは対称行列だから、tQ=Qとなるね。 Tが直交行列ならtT=T-1 tQ=t(T-1AT)=tT tA tT-1=T-1 tA ttT=T-1 tA T Q=T-1AT これが等しくなるから、tA=AでAが対称行列となる。 逆に、 対称行列Aに対して、直交行列Tを変換行列にすることで、対角化ができるだろう。 たとえば、 対称行列A= を対角化しよう。 固有ベクトルを求めると、|A-λE|=(λ-1)(λ+2)-2・2=λ2+λ-6=(λ-2)(λ+3)=0から、固有値λ=2,-3に対して、 λ=2のとき、(1-2)x+2y=0 からx=2yで、 a=(x,y)=k(2,1) 、正規化するにはk=1/√5 λ=-3のとき、(1+3)x+2y=0から2x+y=0で、b=(x,y)=l(1,-2)、正規化するにはl=1/√5 a・b=kl(2・1+1(-2))=0だから、固有ベクトルは直交する。 だから、変換行列Pはa,bを列ベクトルとして横にならべて、P=[a,b] P= 正規化すると、 T= tTT= = だから、 Tは直交行列だから、対称行列を対角化できる。 実際、T-1AT= Tのように直交行列の変換行列を直交変換行列という。 正規直交基底e1,e2,...,enに、直交変換TをしたT(e1),T(e2),...,T(en)も正規直交基底になる。 Tが直交変換であることと変換後の内積と変換前の内積が等しいこと(T(u)・T(v)=u・v)は同値。 だから、直交変換では、内積もノルムも変わらないので、図形の形は変わらない。 だから、直交変換することで、形を変えずに、2次曲線の式を単純にすることができる。

4.演習

行列Aが対角化可能なら変換行列PとAnを求めよう。さらにAを対角化する直交変換行列Tを求めよう。 A=  tA=Aだから、Aは対称行列。 ・固有ベクトルを求める。|A-tE|==0 t=-1,5 t=5のとき、A-5Eを簡約しよう。  z=kとすると、x-z=0, y-z=0から、(x,y,z)=k(1,1,1) 固有空間の次元は1。 t=1のとき、A+Eを簡約しよう。   主成分がない2,3行のy=p,z=qとおくと、1行目からx+p+q=0。  (x,y,z)=(-p-q, p,q)=p(-1,1,0)+q(-1,0,1)。固有空間の次元は22つの固有空間の次元の和は1+2=3だから、対角化可能。 これから、列ベクトルa= , b=, c=が固有ベクトルとなる。 ・変換行列Pを求める。 固有ベクトルを1列に並べてまとめたのが変換行列Pと対角化は、 P=[a,b,c]= Q=P-1AP= だから、Qn=(P-1AP)n= 一方、det(P)=1-(-1-1)=3, P11=det((1,0),(0,1))=1, P12=-det((1,0),(1,1))=-1,P13=det({1,1),(1,0))=-1 P21=-det((-1,-1)(0,1))=1, P22=det((1,-1)(1,1)=2, P23=-det((1,-1)(1,0))=-1 P31=det((-1,-1)(1,0))=1, P32=-det((1.-1)(1,0))=-1, P33=det((1,-1)(1,1))=2 P-1=1/3 t = で、An=PQnP-1= = ・正規直交基底を求めて、直交変換行列Tを求める。 固有ベクトルa= , b=, c= を正規直交化する。 aは正規化するだけでよい。 u1=a/||a||= aの張る空間とbcの張る空間は直交しているから、bとcを直交させてから、正規化すればよい。 bの正規化。u2=b/||b||= cをbに直交させてc2とする。 cu2への正射影(c・u2) u2を始点にして、cを終点にしたベクトル c2=c - (cu2) u2 = ー( )  = ー ()  = = 正規化する。u3=c2/||c2||= T=[u1,u2,u3]=[ , , ] = tTT=Eとなるから、Tは直交行列。 Tで対角化してもPで対角化したと同じ行列Qになる。