6.命題論理
1.命題論理
このページは電子ブック「探求 数学Ⅰ」の一部です。
<条件と命題>
真か偽かどちらかに判定できる式・文を条件[condition]、命題[proposition]という。
2つの条件p,qの間に、pを前提[presupposition]とするとqが結論[conclusion]とすることが正しいとき、
命題「pならばq」が成り立つという。
このとき、前提条件pを十分条件[sufficienat condition]、結論qを必要条件[nessecery ondition]という。
p⇒qとかく。
逆のq⇒pも成り立つとしたら、pとqは真偽の上では同じ条件(同値)と言える。
pとqはともに必要十分条件という。
条件pを満たす要素の集合をP、条件qを満たす要素の集合をQとする。
p(十分)⇒q(必要)が成り立つとき、集合Pは集合Qの部分集合になっている。
つまり、「部分⇒全体」は正しい。
(例)「人間」ならば「動物」だ。「人間」の集合は「動物」の部分集合になっている。
「人間である」なら十分、動物と言えるし、
「動物である」ことは、「人間である」ための必要条件。
言い換えると、p⇒qが成り立つのは、対応する集合でになるときだ。
(例)整数x全体のうち、
「xは2ならばxは偶数で素数」も「xが偶数で素数ならxは2」も両方真なので、
「xは2だ」と「xは偶数で素数だ」は同値(必要十分条件)だ。
<論理式>
2つの条件p,qがあるとき、
命題「pかつ(and)q」のことをp∧qとかき、論理積(logical and)という。
命題「pまたは(or)q」を、p∨qとかき、論理和(logical or),という。
命題「pでない」を¬pとかき、否定(negation)という。
要素となる命題p,q,.....に対して、論理計算(∧、∨、¬)をしたものを論理式という。
論理式の真偽は要素となる命題(条件)の真偽の組み合わせで決まる。
論理式の真偽は要素命題の真偽の関数になる。
<真理条件>
真を1、偽を0とかくことにすると、p,qの真偽は2数組で表すことができる。
(p,q)=10,11,01,00に対して、p∧qが真なのは11のときに限る。
(p,q)=10,11,01,00に対して、p∨qが偽なのは00のときに限る。
(p,q)=10,11,01,00に対して、p⇒qが偽なのは10のときに限る。
pが真なのにqが偽のときだけ、偽になる。
条件pを満たす要素の集合をP,条件qを満たす要素の集合をQとする。
論理積p∧qを満たす要素の集合は、で集合の重なり、積集合。
論理和p∨qを満たす要素の集合は、で集合の合併、和集合。
p⇒qを満たす要素の集合は、集合Pのうち集合Qに重ならない部分だけ除外する。
<「ならば」の真偽>
日常的には「pならばq」が正しいのは「pのときだけqが成り立つ」という意味のときが多い。
しかし、数学的には、「(pのときにqが成り立たない)ことを否定する」という定義になる。
だから、pが成り立たないときのqの真偽は問わない。pが成り立っているときだけで調べる。
「pならばq」が偽の証明には、「pなのにqでない例(反証例、反例)」が1つあればよい。
<背理法>
反例とは反対に、
「pならばq」が真の証明には、「pなのにqでない」とすると矛盾が生じると言う証明がある。この証明方法を背理法[proof by contradiction]という。
(例)「nの2乗が3の倍数ならnは3の倍数だ」を証明するために、
結論だけ否定した命題「nの2乗が3の倍数でnが3の倍数でない」を仮定してみよう。
nが3の倍数でないならば、n=3k+p(p=1,2)とおける。
n2=(9k2+6pk)+p2=3(3k2+2pk)+p2は3で割るとp2あまる。p=1,2を代入すると、どちらもp2は3の倍数に
ならないので、nの2乗は3の倍数ではない。これは仮定と矛盾する。
だから、「nの2乗が3の倍数ならnは3の倍数だ」は正しい。
★命題を集合でイメージしよう
2.命題と命題の関係
<ド・モルガンの法則>
「ANDの否定」イコール「否定のOR」。¬(p∧q)⇔¬p∨¬q
2つの命題p,qがあるとき真理値(p,q)=10,11,01,00に対して、
(¬p,¬q)=01,00,10,11となる。
だから、¬p∨¬qは¬p,¬q=00以外、つまりp,q=11以外は真。
論理積p∧qはp,q=11のときのみ真だから、
否定¬(p∧q)は、pq=11以外は真となる。
(例)(2の倍数で3の倍数)の否定は、2の倍数でないか3の倍数でない。
(例)AとBの2人でくじを引いた場合、当たりが真。
「2人とも当たりの否定は、はずれの人がいる」。
「ORの否定」イコール「否定のAND」。¬(p∨q)⇔¬p∧¬q
2つの命題p,qがあるとき真理値(p,q)=10,11,01,00に対して、
(¬p,¬q)=01,00,10,11となる。
だから、¬p∧¬qは¬p,¬q=11のみ、つまりp,q=00のみ真。
論理積p∨qはp,q=00のときのみ偽だから、
否定¬(p∨q)は、pq=00のみ真となる。
(例)(3の倍数または5の倍数)の否定は、
3の倍数でも5の倍数でもない。
(例)AとBの2人でくじを引いた場合、当たりが真。
「1人は当たりの否定は、2人ともはずれ」。
<逆・裏・対偶>
「pならばq」をpとqは同じことと受け止めて、qならばpが言えると勘違いする人もいる。
この危険をさけるためには、順番がちがうと別の命題になることを意識すること。
場合わけして考える緻密さ・慎重さが大切だね。
p,qの真偽で場合わけする代わりに、類似した4つの命題を並べて違いを意識する方法がある。
p⇒qの逆は、前提と結論を入れ替えたもので、q⇒p。
p⇒qの裏は、前提と結論の順番を変えず、
両方とも否定して、¬p⇒¬q。
p⇒qの対偶は、裏の逆、または、逆の裏のこと。
もとの命題と同値になる。(¬q⇒¬p)⇔(p⇒q)。
だから、p⇒qを証明するためには、結論の否定から前提の否定が言えればよい。
(例)「√3が無理数なら√12は無理数だ」を証明するために、
「√12が有理数なら√3が有理数になる」が言えればよい。
(例)「nの2乗が3の倍数ならnは3の倍数だ」を証明するために、
「nが3の倍数でないならばnの2乗が3の倍数でない」を証明すればよい。
(例)「nの2乗が偶数ならnは偶数だ」を証明するために、
「nが奇数ならばnの2乗が奇数だ」を証明すればよい。
(例)「mnが偶数ならmが偶数またはnが偶数だ」を証明するために、
「mが奇数でnが奇数ならmnは奇数だ」を証明すればよい。
<述語論理>
命題と命題のつながりを真偽の関係から調べるのが命題論理。
一方で、命題を主語と述語に分解してさらに詳しく調べるのが述語論理。
変数xを主語にしたときの述語をfとする。
この文をxの関数を考えてf(x)とかき、変数xを束縛する記号をつけて、真偽を調べる。
(例)
A「すべての実数xについて、x2>0」の否定は、B「ある実数xについてxは0以下」です。
Bはx=0のときに成り立つから真。
すべてはAllのAをひっくり返し、あるはExistのEをひっくり返して、xにつけ、そのあとに
xの述語をかく。以下のような書き方もある。Allの否定はExitをつけて述語を否定する。
1種のドモルガンの定理と言えるね。