1.式のかけ算
1.次数と係数
このページは電子ブック「探求 数学Ⅰ」の一部です。
いきなり問題ですが、「負の数(フノスウ)のメリット」は何でしょうか?
いろいろあるでしょうが、見かけ上の「引き算をこの世から消せること」です。
1−3は「イチひくサン」ではなく、「イチマイナスサン」と読むのです。
つまり、「1」と「ー3」をくっつけた式(シキ)、つまり、和の式と見ることができるのですね。
1と3ではなく、「1」と「−3」という数(スウ)がつながって書かれた式です。
このマイナスもOKという数を項(コウ)とすると、2項式とも言えます。
1項式の別名が単項式、何項だろうが項があるものを多項式と呼ぶのです。
これを文字式の世界にひろげてみよう。
<多項式>
数や文字の積だけでできたかたまりも[項](term , item)と呼びます。
文字にかけられた数の部分を係数(ケイスウ)[coefficient]という。
項には、表記上の細かなルール、習慣(?)があるので、できるだけ従った方が誤解が減るでしょう。
・数>文字の順で、文字はギリシャ文字が先でアルファベット順。
・数は小数よりも分数で、分数は帯分数でなく仮分数で、マイナス記号は数の先頭へ。
・かけ算(×)記号は省き、わり算(÷A)は×1/Aとして分数の分母にする。
・文字の積は同文字ならば指数を使って省略する。
・1×文字や、−1×文字は1×をかかないがマイナスはかく。必要なときだけ、1を復活してかく。
・数の積は計算できるところは計算する。2×3=6にする。
・和と積が混同しやすいとか、積のもとの数をあえて伝えたいときは2・3など、ドットで積を表す。
(例), ,
項が1つ以上和でつながった表現・式を[多項式(タコウシキ)](polynomial)という。
・項の符号は先頭項だけは+を省略しよう。それ以外の項は+でもマイナスでも省略しない。
省略してしまうと、和か積かがわからなくなるから。
・多項式の各項は、和でつながるので、
交換・結合法則を使って、自由に位置や演算の順番を変えることができる。
・特に、項が1つだけの式を単項式ということがある。
多項式を整式と言うことはあるけど、混乱しやすい。
整式[ integral expression、well-formed formula ]というのは、「式を集合として高い視点で見たらまるで整数[Integer]の集合のように見える」という言葉遣いからきてる。
別に、係数を整数にするというわけではないですよ!
係数は小数、分数、√2ですらよい。数と文字の積の和(セキノワ)が多項式。
単項式の数は負の数でもよいので、単項式の和と言っても、ひき算でももちろんよい。
大切なことは多項式を積の和としてとらえること!
(例), ,,
<項の次数と係数>
着目する文字の積の回数を[項の次数(ジスウ)]という。
多項式の項の最高の次数を[多項式の次数](polynomial degree)という。
次数がNの式を、[N次式]という。
項の着目する文字以外の積の部分を[係数](coefficient)という。
(例)は、についての次数は3で係数は、
について次数は1で係数は。
同じ式でも、着目する文字で次数と係数が変わる!
この自由さが解法の手がかりにつながることもある。
(例)は、については5次で係数は、
について3次で係数は
着目する文字について次数が等しい項を[同類項(どうるいこう)](similar term,like term)という。
(例)とは同類項。とはについて同類項。
2.式の単純化
<多項式を整理する手順>
項を着目する文字について係数を前にかき、
次数の高い順(降(コウ)べきの順)か低い順(昇(ショウ)べき)に並べる。
同類項は分配法則を使って、係数をまとめて単純化・簡約化(Simplify)しよう。
(例)
「多項式を、指定した文字について整理しよう。」
x,yについて
xについて
<整式と整式でないもの>
整式は多項式と同義。
整式は項(数と文字の積)の和できているもの。
整式÷整式は分数式という整式ではない。
(例),
加減乗以外の演算や非代数関数(sin,logなど)を使ったものは整式ではない。
(例),, ,
<整式の加法・減法>
整式A,Bの加法はA+Bで、減法はAーB=A+(-B)である。
整式の加減によってできた多項式を整理する。
整式というだけあって、整式の和は整数の和と同じ発想になる。
たとえば、十進数の和は32+15=47というのはどういう計算をしているのか?
十の位の3と1をたして4,一の位の2と5をたして7という計算をしてるはずだね。
これって、整式でも同じなんだ。
3x+2+1x+5=4x+7。
xの位の数(係数)の和が4,1の位の数(定数項)の和が7という計算をすればよい。
つまり文字部分が同じならば、同じ位とみるというのが、同類項という言葉遣いなんだ。
そして、十進整数で位の数はすべて+だったけど、負の数もゆるせば整式の和・差が同じ理屈でできるはずだね。
★整式の単純化をしてみよう!
★整式を加減して単純化しよう!
3.指数法則と式の展開
式と式をかけるときにはm次式×n次式が出てきます。
また、m次式の2乗や3乗などの計算をすることもありますね。これから式の展開をしたり
するときには、次の2つの指数法則をすぐに区別できることは必要になります。
<指数の和の法則>
xをm回かけた項とn回かけた項をかけるとm+n回かけた項ができる。
言い換えると、m次式×n次式=(m+n)次式
(例)項の積は、係数は係数の積に、文字の次数は次数の和になる。
<指数の積の法則>
xをm回かけた項をn回かけると、m・n回かけた項ができる。
言い換えると、(m次式)のn乗=(m×n)次式
(例)
<整式のかけ算>
m項式とn項式の積は、m・n項式となる。
(場合の数の積の法則より)
多項式×多項式=多項式によって、左辺の式を[展開](expand)したとされる。
(例)2項式×3項式=6項式になることは、
分配法則を2段階使えばわかる。
(A+B)(D+E+F)=A(D+E+F)+B(D+E+F)
=AD+AE+AF+BD+BE+BF
<式の展開と係数分離法>
整式の積は整数の積と同様に実行できます。
整式の項の係数をN進数の各位の数とみて筆算します。
それを係数分離法といいます。
やり方
1.式を降べきの順に整理する。係数だけ取り出す。(1,2行目)
2.同じ次数の係数が、位どりのように同じ次数がたてにそろうように実行する。
3.同じ次数の係数をたし算することで、同類項をまとめる。
(ただし、N進数のかけ算のようなくり上がりはない。)
(例)
2 3
☓ 1 5 1
2 3
10 15
2 3
2 13 17 3
(例)
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 -1
-1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1 -1
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
1 -1
(一般化)
このイメージがわかれば、逆に
となることも予想できるね。
★和の法則
★積の法則
★式を展開して単純化しよう!
★整式は整数に似ている!
4.乗法公式
<基本の乗法公式>
・(a+b)(a+b)=(a+b)a+(a+b)b=aa+ba+ab+bb=a2+2ab+b2
2項和の2乗は、前項2乗と2倍の前後の積+後項2乗。
(a-b)²は、bに-bを入ると2乗部分は符号は変わらない。
(a-b)2=a2-2ab+b2
・(a+b)(a-b)=(a+b)a+(a+b)(-b)=aa+ba-ab-bb=a2-b2
和差の積は2乗の差
・(x+a)(x+b)=(x+a)x+(x+a)b=xx+ax+bx+bb=x2+(a+b)x+ab
xの係数は、2次→1次→定数の順に1→和→積
・(ax+b)(cx+d)=(ax+b)cx+(ax+b)d=axcx+bcx+axd+bd=acx2+(ad+bc)x+bd
xの係数は、降べきの順に1次積ac→たすきがけ⇒定数積bd
<式の展開への公式利用>
★文字種がまざるときは最低次の1文字について整理する。
★共通部分をみつけてくくるか、置き換えをして単純化する。
★和差積=2乗差(A+B)(A-B)=A2-B2
・1次の係数の和がsなら、a+b=s, とするととなることが使えるね。
(例)
(x+a)(x+s-a)(x+b)(x+s-b)=,
さらにX=とおき1次式の積で計算可能。
・多項式の共通部分をX、Yとしたとき、和差積は2乗差が使えるね。
(例)
(x+a+b)(x-a-b)=(x+M)(x-M)。a+b=Mとおけば、-a-b=-(a+b)=-Mとなるから。
(x+a-b)(x-a+b)=(x+N)(x-N)。a-b=Nとおけば、-a+b=-(a-b)=-Nとなるから。
(x+a-b)(x-a-b)=(x-b+a)(x-b-a)=(X+a)(X-a)。-bを移項して、x-b=Xとおけばよい。
・和の2乗と差の2乗の和差。差は2倍の積がのこり、和は2乗部分が残る。
(例)
2乗部分は差によって消えるから、
2ab部分は和によって消えるから、
・3項式の積でも、分配法則や場合の数の積の法則が使える。3項×3項=9項式
(例)(a+b+c)(a+b+c)=(a+b+c)a+(a+b+c)b+(a+b+c)c
=aa+ab+ca +ab+bb+bc +ac+bc+cc=aa+bb+cc+(ab+bc+ca)*2
=a2+b2+c2+2ab+2bc+2ca
★式の展開ゲーム
★整数と整式の類似性を感じよう
★整数と整式の類似性を感じよう。
5.演習
<式展開ゲーム>
工夫しなくても展開はできるが、工夫してミス減少と時間短縮をめざすゲームをしよう。
式全体を見渡して、共通点と違いに着目してから、方針を立てる。それから計算を実行するといいね。
★文字種がまざるときは最低次の1文字について整理する。
★共通部分をみつけてくくるか、置き換えをして単純化する。
★和差積=2乗差(A+B)(A-B)=A2-B2
(例)
「(a-b+c+d)(a+b+c-d)の展開」
((a+c)-(b-d))((a+c)+(b-d))=(a+c)2-(b-d)2 あとは2乗の展開をするだけ。
(例)
「(x2+xy+y2)(x2-xy+y2)(x4-x2y2+y4)の展開」
((x2+y2)2-(xy)2)(x4-x2y2+y4)
=(x4+x2y2+y4)(x4-x2y2+y4)=(x4+y4)2-(x2y2)2=x8+x4y4+y8
<3乗の乗法>
(A-B)(A2+AB+B2)=A3-B3 カッコの両端以外は相殺して消える。
(A+B)(A2-AB+B2)=A3+B3 Bに-Bを代入すると、2乗部分だけ符号は変わらない。
bに-bを代入しても、2乗部分だけ符号が変わらない。
(x+1)3=(x+1)(x+1)(x+1)=(x2+2x+1)(x+1)=(x3+(2+1)x2+(2+1)x+1)=x3+3x2+3x+1
これは、係数分離法だと11×11×11=121×11=1331の計算をするのと同じだね。
(例)
「(2x-3y)3の展開」
a=2x,b=-3yと考えると(a+b)3の展開と同じ。
(2x)3+3(2x)2(-3y)+3(2x)(-3y)2+(-3y)3=8x3-36x2y+54xy2-27y3
(例)
「(3a-2b)(9a2+6ab+4b2) の展開」
A=3a, B=2bとA3-B3=27a3-8b3