2.因数分解
1.因数分解とは何か?
このページは電子ブック「探求 数学Ⅰ」の一部です。
<因数分解は展開の逆>
[展開(expand)]は、多項式×多項式を計算して1つの多項式に整理することでした。
(例)
[因数分解(factorization)]は、展開の逆で多項式を多項式×多項式(因数×因数)の形に分解すること。
(例)
因数分解は、整数の素因分解と同様に、もとの数の範囲で分解できるところまでやります。
・4乗は2乗の2乗としてみることができる。6乗は3乗の2乗か2乗の3乗に直そう。
マイナスA3乗はマイナスAの3乗に直せる。
・マイナスxの2乗はプラスx2乗。
・文字は指数に着目して、数は平方数、立方数に着目しよう。
・式の展開と同様に1文字整理、共通因数を置き換える。
2乗の差は和差の積など乗法公式を利用しよう。
(例)
2.因数分解の公式
<2項式の積>
・
・
平方数2個と2文字の積の2倍は、和の平方。
(例)「x2+8x+16の因数分解」は?
8=2・4、42=16からb=+4。(x+4)2
・
2乗の差は和差積
(例)「4x2-81y2の因数分解」は?
4も81も平方数なので2乗形にしておく。4x2-81y2=(2x)2-(9y)2=(2x+9y)(2x-9y)
・
係数が1⇒和⇒積 となる2つの1次式の定数項 a,bをさがす。和が負ならa,bの片方か両方が負。
(例)「x2-5x-24の因数分解」は?
和が負、積が負だから、積を負が強い正と負の約数に分解する。24=3・8, 8-3=5から、8を負にする。
(x-8)(x+3)
・
係数を、ac⇒たすきがけ⇒bd としてacの約数ペアを先にいれておき、bdの約数ペアでたすきがけ検証。
(例)「6x2+13x+5の因数分解」は?
和が正、積が正だから、ともに正で、5=1・5と決定。6=1・6か2・3だが、6+5=11,6・5+1=31から2・3と決定。
(2x )(3x )とかいておく。たすきがけ13=3+2・5から2と5は別のカッコに入れる。(2x+1)(3x+5)
★因数分解ゲームをしよう!(正数のみ)
★因数分解ゲームをしよう!(負数あり)
★因数分解ゲームをしよう!(たすきがけ)
★xyの式の因数分解をxに着目してやってみよう!
3.因数分解の着眼点
<因数分解公式の利用方法>
・次数の低い1文字の式として整理する。
(例)「xyz+x2y+xy2+x+y+zの因数分解」
zの1次式。1次の係数は(xy+1)、定数項は(xy+1)(x+y)。
だから、(xy+1)(x+y+z)。
(例)「x3+(a+2)x2+(2a+1)x+aの因数分解」
aの1次式。1次の係数は(x2+2x+1)=(x+1)2、定数項は(x3+2x2+x)=x(x+1)2。
だから、(x+1)2a+x(x+1)2=(x+a)(x+1)2
(例)「6x2-7xy+2y2+3x-y-3の因数分解」
xでもyでも2次式だが、2次の係数が2のyで整理するとたすき掛けが楽かも。
2y2-(7x+1)y+6x2+3x-3=2y2+(-7x-1)y+3(2x2+x -1)=2y2+(-7x-1)y+3(2x-1)(x+1)
(2y -(6x-3))(y -(x+1)) ダメ (2y -(2x-1))(y -(3x+3)) ダメ
(2y -(3x+3))(y -(2x−1)) =(2y -3x-3)(y -2x+1) =( 3x-2y+3)( 2x-y-1)
・共通部分をさがして、共通因数にするか文字で置き換える。次数下げのため置き換える。
(例)「x3-5x2-4x+20の因数分解」
x2(x-5)-22(x-5)=(x+2)(x-2)(x-5)
(例)「(x+1)(x+3)(x+5)(x+7)+15の因数分解」
1+7=3+5=8に着目して、x2+8x=yとおく。
(y+7)(y+15)+15=y2+22y+120=(y+10)(y+12)
=(x2+8x+10)(x2+8x+12)=(x2+8x+10)(x+2)(x+6)
(例)「a6-b6の因数分解」
a3=A,b3=Bとおくと、A2-B2=(A+B)(A-B)=(a3-b3)(a3+b3)
=(a-b)(a2+ab+b2)(a+b)(a2-ab+b2)
・マイナスカッコでくくる。-A-B=-(A+B), -A+B=-(A-B)のように2項をくくり共通因数を作る。
(例)「a3-a-b3+bの因数分解」
a3-b3-(a-b)=(a-b)(a2+ab+b2)-(a-b)=(a-b)(a2+ab+b2-1)
・複2次式(2乗の2次式)の定数が平方数なら、平方完成で2乗をつくる。1は平方数。
(例)「x4-2x2+1の因数分解」
x4-2x2+1=(x2-1)2=(x+1)2(x-1)2
(例)「x4-6x2+1の因数分解」
・次元を下げる置き換えと平方完成と2乗差が和差積。
x2=Aとすると、A2-6A+1=A2-2A+1-4A=(A-1)2-(2x)2
(A+2x-1)(A-2x-1)=(x2+2x-1)(x2-2x-1)
・文字数がa,b,cのように3文字あっても、対等な式なら、対称式やサイクリックな因数に分解できる
可能性が高い。1文字整理と共通因数さがしが役立つ。
(例)「(a+b+c)(ab+bc+ca)-abcの因数分解」
aだけを文字とみて整理する。
(例)「a3+b3+c3-3abcの因数分解」
aだけを文字とみて整理する。A3+B3=(A+B)3-3AB(A+B)を使う。
4.演習
いろいろな視点で因数分解してみよう。
(例)「a2-a-b2+bの因数分解」
・aについて整理する。1次の係数は−1、定数項-b2+b=-b(b-1) で、-b+(b-1)=-1だから、(a-b)(a+b-1)
・2乗の差とマイナス()の利用。a2-b2=(a+b)(a-b)で、-a+b=-(a-b)から、共通因数が(a-b)
(例)「x2-y2-z2 +2yzの因数分解」
・xについて整理する。定数項-y2-z2 +2yz=-(y-z)2x2-(y-z)2=(x+y-z)(x-y+z)
・yについて整理。2次の係数−1,1次の係数+2z, 定数項x2-z2=(x+z)(x-z),x+z-1(x-z)=2zでたすきがけ。
(-y+x+z)(y+x-z)=(x-y+z)(x+y-z)
(例)「x3-3x2-4x+12の因数分解」
・3の倍数項-3x2+12=-3(x2-22)、残りx3-4x=x(x2-22)。(x-3)(x+2)(x-2)
・4の倍数項-4(x-3)、x3-3x2=x2(x-3)。(x2-4)(x-3)=(x+2)(x-2)(x-3)
(例)「a2(b-c)+b2(c-a)+c2(a-b)の因数分解」
・aについて整理する。2次の係数は(b-c),1次の係数(c2-b2)=-(b-c)(b+c),定数項b2c-bc2=bc(b-c)
共通因数(b-c)以外の係数は2次は1,1次は-(b+c)、定数はbcだから、(a-b)(a-c)と分解できる。
(b-c)(a-b)(a-c)=-(a-b)(b-c)(c-a) 最後はa>b>c>aとサイクリックに因数を書き直す。
・置き換え。サイクリックな因数で分解できる予想で、a-b=A,b-c=Bとおく。A+B=a-cだから、
a2B+c2A-b2(A+B)=A(c2-b2)+B(a2-b2)=(a-b)(c-b)(c+b)+(b-c)(a-b)(a+b)
=(a-b)(b-c)(-c-b+a-b)=-(a-b)(b-c)(c-a)
(例)「x3+8y3+6xy-1の因数分解」
・公式a3+b3+c3-3abc=(a+b+c)(a2+b2+c2-ab-bc-ca)で、a=x,b=2y, c=-1,-3abc=+6xyとなる。
(x+2y-1)(x2+4y2+1-2xy+2y+x)=(x+2y-1)(x2+4y2-2xy+x+2y+1)カッコの中を降べきの順に並び替えた。
・公式を忘れても、(x+2y)の因数や、1=13に着目する。
3次の項x3+8y3=(x+2y)3-3x2y(x+2y)=(x+2y)3-6xy(x+2y)から、
x3+8y3+6xy-1=(x+2y)3-6xy(x+2y)+6xy-13=(x+2y)3-13-6xy(x+2y-1)
=(x+2y-1)((x+2y)2+(x+2y)+1)-6xy(x+2y-1)=(x+2y-1)(x2+4xy+4y2+x+2y-6xy+1)
=(x+2y-1)(x2+4y2-2xy+x+2y+1)