7.ベクトルと空間
このページは電子ブック「探求 数学B・C」の一部です。
★ベクトルを利用して方程式を作ろう
★法線ベクトルを利用して面対称をさぐろう。
1.平面と直線
<直線の式>
直線のベクトル方程式は2次元のときと全く同じで
ベクトルの足し算が途中の点を省いた最短矢印であることから、
・2点A を通り方向[direction]ベクトルと平行な直線上の点Pは
とかける。
・2点A,Bを通る直線の方向ベクトルは だから、
2点ABを通る直線は となる。s=1-tとおくと 。
<ベクトルの和>
方向が3つ独立に取れるために、3つのベクトルの和は2つの和で求めた対角線と3つ目のベクトルとの和になり、3つのベクトルの張る平行6面体の対角線ベクトルになります。
<ベクトルの成分>
ベクトルの成分計算は、和・差・定数倍については2次元と同様になります。
内積の成分計算は、同方向成分の積の和なので、3つめの次元(成分)の積和が増えるだけです。
(例)
「2つのベクトルの作る角度を求めよう。a=(1,-1,2),b=(-1,-2,1)」
|a|=√6,|b|=√6, a・b=-1+2+2=3。cosθ=1/2だから、θ=60度。
<平面の方程式>
・定点Aを通り2点B,Cを通る直線と垂直な平面上の点Pがある。
ベクトルAPとベクトルBCが垂直、つまり、内積=0という式と同値。=0。
・定点Aを通り、2つの方向ベクトルAQとARが張る平面上の点Pがある。
2つの方向ベクトルで平面の傾きが決まり、平面の位置が決まる。
(例)
「四面体OABCのPがOAの中点、QがOBを2:1に内分する点、RがBCの中点。
3点PQRを通る面と辺ACの交点をSとするとき、AS:SC」は?
Oを基準に小文字の頂点名を位置ベクトルとする。
p=1/2a, q=2/3b, r=1/2b+1/2c, s=ma+nc(m+n=1)となる。
ベクトルPQ=q-p=2/3b-1/2a,ベクトルPR=r-p=1/2b+1/2c-1/2a。
この2つのベクトルが張る傾きで定点Pを通ると3点PQRを通る平面となりsも通る。
s=OP+uPQ+vPR
=1/2a+u(2/3b-1/2a)+v(1/2b+1/2c-1/2a)=1/2(1-u-v)a+(2/3u+1/2v) b+1/2v c=ma+nc(m+n=1)
a,b,cは一次独立だから係数比較して、4u=-3v, 1-u-v+v=2から、u=-1,v=4/3となる。
m=1/2(1+1-4/3)=1/3, n=2/3から、ACを2:1に内分する。
(例)
「3点の座標をA(3,0,0),B(2,1,2),C(1,-2,2)とするとき原点から三角形ABCに下ろした足Hの座標と
OHの長さ」は?
ベクトルAB=(-1,1,2)、AC=(-2,-2,2)となるから、平面ABCへの法線ベクトルをn=(x,y,z)とおくと、
法線とAB、ACは垂直だから、-x+y+2z=0, -2x-2y+2z=0。これから、x:y:z=-3:1:-2となる。
だから、ベクトルOH=(-3p, 1p, -2p)とおける。
点Hは平面ABC上にあるので、ベクトルOH=OA+uAB+vAC=(3-u-2v, u-2v, 2u+2v)
これを解くと、u=3/14、v=3/7, p=-9/14となるから、H(27/14, -9/14, 9/7)
OH2=(9+1+4)p2=14p2=14(-9/14)2=81/14より、OH=9/√14。
(例)
「点A(1,2,4)を通り、法線ベクトルn=(-3,1,2)の平面に関して、点Q(-2,1,7)と対称な点R
の座標」は?
平面上の点をP(x,y,z)とするとnとベクトルAPの内積=0となるから、
-3(x-1)+1(y-2)+2(z-4)=0から、-3x+y+2z=7。
ベクトルOR=OQ+nの定数倍=(-2,1,7)+t(-3,1,2)=(-2-3t, 1+t,7+2t)。
2点QとRの中点M=(OQ+OR)/2=(-2-3/2t,1+1/2t,7+t)。Mは対称面上にあるので、
-3(-2-3/2t)+(1+ 1/2t)+2(7+t)=7。これから、t=-2。R=(-2-3(-2), 1-2, 7+2(-2))=(4,-1,3)
<球の方程式>
・円の方程式は定点Cからの距離rが一定な点Pの集合。
|p-c|=rまたは、 (p-c)・(p-c)=r2
(例)
「原点を中心とする半径3の球と直線x=3k,y=-k,z=2kとの交点Pの座標」は?
球の方程式にx2+y2+z2=9に直線の方程式を代入すると、(9+1+4)k2=9、k=±3/√14。
(x,y,z)=k(3,-1,2)=±3/√14(3,-1,2)=3/√14(3,-1,2), 3/√14(-3,1,-2)
(例)
「2点A(2t,2t,0),B(0,0,t)に対して点P(x,y,z)が内積の和がOP・AP+OP・BP+AP・BP=3となる。Pの座標」を
tを使って表すと?
(x,y,z)・(x-2t+x-0,y-2t+y-0,z-0+z-t)+(x-2t,y-2t,z-0)・(x-0,y-0,z-t)=3
式を整理して、(x-2/3t)2+(y-2/3t)2+(z-1/3t)2=1+t2
中心C(2/3t, 2/3t, 1/3t)で、半径√(1+t2)、OC=t,CP=半径。OP=t+√(1+t2)
<三角形の面積>
三角形のOABの面積は1/2|a||b|sinθ=
(例)
「3点の座標をA(3,0,0),B(2,1,2),C(1,-2,2)とするとき三角形ABCの面積」は?
ベクトルAB=(-1,1,2)、AC=(-2,-2,2)となるから、それぞれの絶対値の2乗と内積の2乗は、
1+1+4=6, 4+4+4=12, (2-2+4)2=16だから、面積は1/2√(6・12-16)=√14。
★四面体と法線
★四面体の切断と垂直
2.四面体に親しむ
四面体を素材にすることで、空間ベクトルや図形の方程式の扱いに親しもう。
<四面体の体積と内接球>
原点OとA(3,0,0),B(0,2,0),C(0,0,1)の4点をもつ四面体の面ABCに原点Oからおろした垂線の足がHのとき、Hの座標と四面体に内接する球の半径を求めてみよう。
・切片の座標の比がx:y:z=3:2:1なので、面ABCをxy平面に射影したとき、ABと法線は垂直になる。
ABの傾きは-2/3、法線の傾きは3/2。だから、xy成分は(2,3)だから、xy切片比3:2の逆比。
同様にして、yz成分は2:1の逆比で1:2。これから、法線ベクトルの成分比は2:3:6となる。
平面ABC上の点をP(x,y,z)とすると、ベクトルの内積 が平面の方程式。
から2(x-3)+3y+6z=0。そこで、H(2t,3t,6t)がPになればよいね。
2(2t-3)+3・3t+6・6t=0。49t=6。t=6/49。
これからH(12/49, 18/49, 36/49)だね。
・内接球の半径をrとすると、四面体の体積は4面を底面とする三角錐の体積の合計でもあるね。
だから、全体1/3・3・2/2・1=1となる。
4つの三角錐は底面が△ABO,△BCO,△CAOなら、
体積は1/3・3・2/2・r+1/3・2・1/2・r+1/3・1・3/2・r=1/3・(6+2+3)/2・r=1/3・11/2・r
△ABCの面積は1/2=
=1/2
=7/2だから、三角錐の体積は1/3・7/2・r
これから、1/3・11/2・r+1/3・7/2・r =3r =1。r=1/3。
(一般化してみよう)
原点OとA(a,0,0),B(0,b,0),C(0,0,c)の4点をもつ四面体の面ABCに原点Oからおろした垂線の足がHのとき、Hの座標と四面体に内接する球の半径を求めてみよう。
・切片の座標の比がx:y:z=a:b:cなので、面ABCをxy平面に射影したとき、ABと法線は垂直になる。
xy成分比は(b:a), yz成分比は(c:b)から連比で、法線ベクトルの成分比は(bc,ca,ab)
平面ABC上の点をP(x,y,z)とすると、ベクトルの内積 が平面の方程式。
からbc(x-a)+cay+abz=0。そこで、H(bct,cat,abt)がPになればよいね。
bc(bct-a)+ca・cat+ab・abt=0。(bc)2+(ca)2+(ab)2t=abc。
これからH=t(bc,ca,ab)だね。
・内接球の半径をrとすると、四面体の体積は4面を底面とする三角錐の体積の合計でもあるね。
だから、全体1/3・a・b/2・c=1/6abcとなる。
4つの三角錐は底面が△ABO,△BCO,△CAOなら、
体積は1/3・a・b/2・r+1/3・bc・1/2・r+1/3・ca・3/2・r=1/3・(bc+ca+ab)/2・r=r/6・(bc+ca+ca)
△ABCの面積は1/2=
=1/2
だから、三角錐の体積は1/3・・r=r/6・
これから、r/6・(bc+ca+ca)+r/6・ =1/6・abc
r ((bc+ca+ca)+ )=abc
r=。
(例)
具体にもどして確認する。(a,b,c)=(3,2,1)のとき、
abc=6, ab+bc+ca=6+2+3=11, (ab)2+(bc)2+(ca)2=36+4+9=49.√49=7. 6/(11+7)=1/3.
<正四面体の切断>
1辺の長さが1の正四面体のOABCを辺OBの中点Rと辺ACの中点Sを通る平面Mで切断した。
平面Mは辺OAをp:(1-p)で内分する点Pを通り、辺CBをq:(1-q)に内分する点Qを通る。
RSとPQの関係をさぐろう。
をpの式で表してみよう。A,B,C,P,Q,R,Sの位置ベクトルを原点Oを基準にして、 とする。
・pとqの関係は?
だから、
P,Q,R,Sが同一面にあるので、PQはPRとPSの一次結合で表すことができる。
これを独立なベクトルについて整理して係数比較すると、
s=2q, t=2(1-q) となり、p+q=1となるね。
・RSとPQの関係は?
ベクトルはサイズが1で、互いの内積が(1+1-1)/2=1/2となることを使うと、
この2つのベクトルの内積を計算していくと、 となる。だから、垂直だね。
3.多次元ベクトル
<コサイン類似度>
(おいしさ,甘さ,辛さ)の3次元で、食品1から7のデータを平均して整数化したとします。
食品1=(5,2,3),食品2=(4,5,2), 食品3=(1,2,5),
食品4=(5,4,3),食品5=(3,5,2), 食品6=(2,5,3), 食品7=(3,1,1)
基準となる食品1から3に対して、食品4から7までの類似度を計算します。
計算方法はcosθ=a・b/|a||b|という、コサインθの値が-1から1をとることを利用します。
−1は正反対の、1は同じ、0は無関係という類似度判定をします。
これがコサイン類似度。
食品4,食品5,食品6,食品7に対して、
食品1は、0.96、0.87、0.76、0.97
食品2は、0.96、0.99、0.94、0.85
食品3は、0.72、0.71、0.79、0.55
食品2と食品5(0.99)が似ていて,食品3と食品7(0.55)が似ていない。
食品だけなく、単語の意味、画像データなど、多次元に分解して、
コサイン類似度を求めて比較することは、機械学習や人工知能ではよく使われています。
<相関係数>
相関係数は共分散:データと平均の差を偏差という。
2項X,Yについてのx偏差とy偏差の積の平均をxyの共分散(covariance)という。
相関係数(correlation coefficeant):2量の共分散Sxyを2量の変量の標準偏差の積SxSyで割った商。
r=
<相関係数の性質>
「相関係数の絶対値は1以下である。」
n人のXとYの偏差データを、n要素をもつベクトルa、ベクトルbとすると、
相関係数 r = aとbの内積/(aの大きさ・bの大きさ)
==cosθ
と、上記のコサイン類似度と同じことになる。
r=cosθは-1以上1以下。
r=0のとき、θ=90°(無相関)。
r=1のとき、 θ=0(最大の正の相関)2つのベクトルは同じ向きに重なる。
r=-1のとき、θ=180°(最大の負の相関)2つのベクトルは逆向きに1直線になる。