任意の代数曲線を描くリンク機構

前章の直交座標抽出器は、逆に座標を入力することで点の位置を定められることが確かめられます。 そこで、入力 x, y を用意します。 代数曲線とは、x と y の二次多項式の方程式 P(x, y) = 0 の形で表される曲線で、 この方法でいかなる平面上の曲線も正確に描画、あるいは十分に近似できることが知られています。 これまで説明した方法で、描きたい曲線に対応する多項式 P(x, y) を構成します。 具体的には、次数 1, x, y, x2, xy, y2, ... を乗法によって必要な分だけ作った上で、 用意した定数と掛け、全てを加えます。 そしてその多項式の値を描く点を、0、すなわち固定点につなげることで、 方程式 P(x, y) = 0 を表すリンク機構が完成します。 これで、入力として用意した x, y の動きは、方程式によって制限されます。 このx, y を直交座標のリンク機構に入力すると、出力の点は描きたい曲線を描きます。 以上で、リンク機構によって任意の代数曲線が描ける、と予想できます。 ここでこのような遠回しな言い方をしたのは、前書きでも述べた通り、 ここまで述べてきたことの多くは私自身の推論のみによるもので、他に根拠を持たないからです。 つまり、厳密性を持たない上に、欠陥が見つかる可能性が大いにあります。 しかし、「任意の代数曲線を描くリンケージが存在する」という定理は、 すでに完全に証明されています。 その証明の基礎を作ったのはケンペという人物で、そのため、 この定理はケンペの万能定理と呼ばれます。 その証明では、点の位置を2本のリンク (長さ r1, r2) の角度 α, β で  x = cos α + cos β  y = sin α + sin β = (1 - cos2 α) + (1 - cos2 β) と表し、cos で方程式を書き換えて、 直線器、逆転器、角の加算器、複写器等を使って方程式を構成します。 ケンペの証明には、支柱の必要性を見逃していたなどいくつかの欠陥がありましたが、 その後他の数学者によって改善され、完全な証明となりました。