リンク機構の定義1
ここからしばらく、平面のリンク機構について詳しく調べていきます。
本稿の目的は、リンク機構を用いて何ができるかを探求することです。
まず、ここで扱うリンク機構がどんなものであるかを明らかにします。
リンク機構の基礎になるのは、「グラフ」という概念です。
ここでいうグラフとは、普通グラフと聞いてイメージするような図のことではなく、
「点」と、その「つながり」からなる構造のことです。
点のことをノード、つながりのことをエッジと言います。
こう言うと抽象的すぎて何のことだかわかりにくいですが、
実は、グラフの構造を持つものは社会のあちこちで見られます。
路線図は、駅を点として路線という線でつないだものです。
物語や歴史の理解に欠かせない人物関係表も、人という点を関係の線でつないで作られます。
数多くのウェブページが繋がったインターネットも、グラフ構造の一種です。
さて、リンク機構で扱うグラフには、一つの特徴があります。
点と点を繋ぐ線は全て線分(まっすぐ)で、それぞれ長さが決まっています。
一方、その向きや長さは制限されていません。
つまり、ここでの(平面の)リンク機構の定義を端的に言うならば、「エッジが長さ一定の線分である平面グラフ」のようになります。
ここで、実際のリンク機構を見てみましょう。
ポスリエの反転器です。 AB = DA = a, BC = CD = DE = EB = b とします。
リンク機構としての特性を無視して単純なグラフとして見れば、これは
・5個のノード A, B, C, D, E
・6本のエッジ AB, BC, CD, DA, DE, EB
(順不同)
という構造のグラフということになります。
例えばここで、同じ5個のノードと6本のエッジでも、エッジを組み替えることで別の構造が現れます。
このように、同じノードに対しても、その繋がりかたによって様々な構造が現れるのがグラフの特徴です。
先ほど見たポスリエの反転器は、リンクの長さが既に決まっていましたが、
もしそれが決まっていなかったら、それぞれの点が自由に動いて、全体の位置関係が定まりません。
そこで、リンクの長さ、言い換えれば点と点の間の距離を定めることで、
点の動きが制限され、位置関係が定まり、これまで見てきたようなリンク機構が完成します。